毎日は平和 Short | ナノ
香水
「和葉って香水なに使ってるん?」
「えっ?アタシ―…?」
今日のお昼休み、お弁当を食べながら話をしていたら
そんな話題になった。
「男子っていい匂い好きそうやん?和葉はなに使ってんのかなって思って。」
「アタシ、なにも使ってへんよ?」
そう答えたらみんなに驚かれた。
今までそんなこと考えたことなかったし、香水なんて高くてアタシのお小遣いで買えるもんやないって思っとった。
でも、友達の見せてくれた雑誌に載っていた香水は案外安くて
アタシも買えるかも…って思ったり。
「和葉には甘い匂いが似合うと思うな〜。」
「元気な和葉には、さわやか柑橘系もええと思うけどな。」
「ここは大人な雰囲気をかもし出してクールな匂いを…!」
そんな話をしていた時。
「和葉!!ちょお来い!!」
平次からの呼び出し。
友達との楽しいガールズトークの時間は終了。
結局、平次の用事はたいしたことなかったんやけど
話の続きをしようとして席に戻ったら授業開始のチャイムが鳴ってしまった。
* * *
「ほな、帰るで。」
アタシは平次と一緒に帰り道を歩いた。
「今日、オカンが夕食に来いって言っとったで。」
「行ってもええのん?」
「お前を連れていかんと俺が怒られるやろうが。」
平次はアタシに目線を合わせて言った。
「お邪魔します〜。」
「あら、和葉ちゃん。いらっしゃい。あの子の部屋で待っとって下さい。」
おばちゃんはアタシを出迎えてくれて、お盆に入ったジュースを渡してくれた。
先に部屋に行った平次の元へと向かう。
ガチャ。
「平次〜?ジュース持ってきたで〜?」
「おん。飲むわ。」
平次は渡したジュースを飲み、コップを机の上に置いた。
「和葉?」
「どしたん?」
「お前、香水ってモンつけとんのか?」
「え?アタシはつけてへんけど…」
男子はいい匂いが好きって友達が言ってたけど
平次もそうなんかな?
* * *
「…平次は香水好きなん?」
和葉は少し頬を赤らめる。
「今日、友達に聞いたんよ。意外に安いしアタシのお小遣いでも買えそうやなって。
そ、それで…平次とは一緒に居ること多いし…平次の好きな香水にしよかな思って…///」
俺の好みの香水つける?
お前は…それ、どういう意味で言っとんねん。
俺好みになるっちゅーことか?
…いや、和葉に限って意識して聞いてる訳ちゃうやろな。
ただ単に香水を選んで欲しいだけの目や。
「…せやな。どれでもええんとちゃう?あんまりキツイんはやめてくれや。」
「そうやね〜。」
和葉は買うつもりなんやろうか?
きっとあの様子やったら今週の日曜は買い物につき合わされそうや。
ま、ええか。二人で出かけんのも久しぶりやしな。
「あ、平次。アタシの洋服ある?」
「服?この間置いとったやつがあるで。せやけど何でや?着替えるんか?」
「そうやなくて、おばちゃんが『まだ夕飯が作り終わってないからお風呂にでも入ってきてください。』って言ってくれたんよ。」
「ほ〜?」
自分から聞いたものの和葉の言った言葉を適当に聞き、俺は和葉の服を探していた。
「ほれ、服。」
見つけた洋服を和葉に手渡してやると「ありがとう。」と言って部屋から出て行った。
―和葉が部屋から出ていって三十分程が経った。
「…どこ行ったんや?着替えるんにそない時間かかる訳ないよな?」
ガチャ。
そんなことを考えていたら部屋のドアがあいた。
入ってきたのはさっき俺が手渡した洋服を着た和葉。
首にはバスタオル。
「あ〜気持ちよかった。」
「なんや和葉、どこ行っとったん?」
「お風呂入ってたんよ。アタシ言ったと思うんやけど。」
濡れた髪の毛を乾かしながら俺の横を通り過ぎる和葉。
そのまま俺のベッドに腰かけよった。
「なんで風呂なんて入んねん。」
「ええやないの。おばちゃんが入ってって言ったんよ?」
無防備な和葉は俺のベッドに腰かけたまま。
まだ乾ききっていない髪の毛が、いつもの和葉と違って色っぽく見える。
(…オカン。俺に…この状況どないせぇって言うんじゃ!!)
「和葉。」
そう呼ぶと、「何?」と首をかしげて俺の方を向いた。
「香水なんてもんいらんやろ。」
そういったら和葉は「何で?」って聞き返してきよった。
なんでって…
風呂あがりのシャンプーの匂いは…反則やろ。
※あとがき
平次は香水苦手なタイプだと勝手に思ってます。
お風呂上りのシャンプーの匂いには弱そうだと思って書いてみました。
和葉ちゃんがお風呂に入ったのは…やっぱり平次の母の企みでしょう。
平次、我慢やで!
オカンに負けたらアカン!!自分に負けたらアカン!平次!!
2012/03/06