毎日は平和 Short | ナノ コタツ蜜柑




「う〜…寒い。」


こたつに入りながら何をするでもなくテレビを見ていた。

冬休み。寒うて寒うて仕方ない。



近くに置いてあった蜜柑を頬張る。
これがあったら今は他になんもいらんと思うくらいコタツには蜜柑が合うてると思う。

今日一日はコタツで蜜柑食ってるだけでええわ。

いや…むしろ、コタツから出たくないわ。


寒いし。




新しい年を迎えて世間は何や騒がしい。
お正月ムード一色や。

騒がしいのは面倒や。
親戚が家にきて下ではワイワイ騒いどる。



「平ちゃんは?」


「息子なら二階に居りますよ。呼んできましょうか?」



下からオカンと親戚の会話が聞こえる。

あ〜…下に行かなアカンのか。
そしたら全員に挨拶しないとアカンやんけ。


今年はまだ和葉に会うてへんのに。


そんなことを考えてたら階段を上る音がして、部屋のドアが開いた。



「平次〜?」



オカンやない声。
でも…聞きなれた声。


うしろを振り向くと、和葉が居った。




「あけましておめでとう!」




いつもと変わらない笑顔で新年の挨拶をした和葉。

年が明けて一番に見たかった顔。
ようやく見れたで。



「お…おめでとさん。」



そう返すとさっきよりもっと笑顔が明るくなった。



「平次に一番に見せたかったんよ〜!似合うてるかな?」


クルクル回りながら尋ねてきた和葉が着ていたのは着物。
赤い振袖を着てオレンジ色のリボンを結んで。


そんなん似合うてるに決まっとるやんか。



「孫にも衣装やな。」



口から出てきよったのはしょうもない言葉で…



「平次〜!!」



和葉が怒って俺の頬をつねる。



「痛い!痛いやろ!!」

「平次が悪いんやもん!!」


にっこり笑ったまま俺の頬をつねっている和葉。
いや…



「ほんまは可愛い思ってんねんて。」



ピタッと和葉の動きが止まる。



「今なんて?」


「は?」


「可愛いって言ってくれたん?」



和葉の言葉に俺の動きも止まる。

…もしかして俺、思ってたこと声に出してしもうたか?


あ〜もう、この際どうにでもなれ!




「よう似合うてるわ。」

「え?」



「…よう似合うてるわ。」



和葉の反応がなくて心臓がバクバク言っとる。
俺は恐るおそる和葉の顔を見た。



「平次おおきに!」



嬉しそうな和葉の笑顔があった。



「今から初詣行こ?」


「なんや…今からか?」



「だって平次と一緒に行きたかったんやもん。」




そんなこと言われたら断れることもなく。



「下で待っとけ。」


「うん!」



まぁ、面倒な挨拶もしないで済むし
和葉と一緒に居れるならそれでええか。


やっぱりコタツと蜜柑はいらん。




俺には…和葉だけ居ってくれれば他は何もいらんかもしれん。








あとがき


今年最初の平和です。
IVENTに入れるべきかな?って思ったりもしたんですけど
ここに入れたかったんです。


素直な平次は書いてて楽しい。

笑顔がたくさんの一年になりますように。
×