毎日は平和 Short | ナノ



夕立って、なんでこんなに突然来るんやろ?



「お日さまも早うご機嫌直して出てきてくれればええのになぁ…」



放課後の玄関前で一人。



「雨が降るなんて、天気予報で言うてへん…」


晴れだと思っていた天気予報が外れ
当然、傘など持って来ていないアタシは帰るに帰れなかった。


頼りにしていた友達は、最近できたと言っていた彼氏と一緒に帰ってしまい
他の人も帰ってしまったようで玄関から出てくる人はいなくなった。


「一人もんってのも、寂しいだけや…」


アタシは一人、雨が止むのを待っていた。


雨は一向に止む気配がない。
けれど、そろそろ暗くなってきてしまう…

ずぶ濡れになるのを覚悟して、持っている鞄を頭の上に乗せ
雨の中へ飛び出そうとした時―…



「ここに居ったんか。」

聞きなれた声が聞こえた。


後ろを振り向くと、平次が立っている。


「平次?帰ったんやなかったん?」


平次は靴を履き替えながら「お前のこと、探してたんや。」と言った。


「え、アタシ?」

「そうや。」


思いがけない言葉にちょっとだけ驚く。


「授業終わったから、窓から外の様子見たんや。
そしたら雨降ってたやろ?」


確かに授業が終わったときには雨が降っていた。
降りだしたのは、少し前だろう。


「うん。確かにそうやね。
でも…雨が降ってるんとアタシと、何が関係あるん?」


「和葉、傘持ってきてへんやろなって思って探しててん。
せやけど居らんかったから帰ろ思うて玄関まで来てんけど
今にも雨ん中に飛び出しそうな奴見つけたからな。声かけなアカンやろ?」


アタシの横まで来て、そう言った平次は
鞄を頭の上に乗せたままのアタシの姿を見た。

アタシは急いで鞄を下ろし、両手で自分の前に持ちかえる。


「アタシのこと…探してくれてたん?」


「せやで。
どうせ、傘持ってきてへんねんやろ?」



いつもの口調やったけど
アタシにはいつもよりほんのちょっとだけ平次の声が優しく聞こえた。


「…うん。」と素直に頷くと、平次は得意げに右手に持っていた傘をアタシに差し出した。


「しゃーないなぁ。入れたるわ。」


そう言って平次はアタシに傘を手渡した。

貸してくれるということなのか?
『入れたるわ。』ってことは、この傘一本しかないのやろうか?

考えても仕方ないので、アタシは傘を広げて平次に渡した。



「和葉。」



渡した傘の中に入れと平次はアタシを呼んだ。



「うんっ。」



一人用の傘は二人で使うと小さくて
雨に濡れてしまいそうやったけど

濡れないように平次の肩にピタッとくっつくことが出来たんは…



『幸せやった』…かも。








これ、結構お気に入りのshortです。

最後の最後で「…かも」を付けたのは、和葉ちゃんの素直じゃないところを
表現したかったからです。

ちなみにこれでもまだ、付き合っていない設定です。
あくまでも幼馴染みなんです。


2011/11/06

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