毎日は平和 Short | ナノ
ブランコ






キィー―…キィ―…

鈍い金属の音。
公園を通りかけた俺はブランコの音に気づいた。

小さな子供は、もう居ない。

夕方を過ぎ、日も沈みかけている時間に
ブランコに乗っているのは場違いな高校生一人。


「…なにやってんねん。」

本当は答えは聞かなくても分かっとる。



「へぇ…じ?」

グスッと涙まじりの声が、弱々しく返ってきた。

「風邪引くで。」

俺は薄着の和葉に自分が今まで着ていたアウターを肩にかけてやった。

「…あったかい。優しいな…平次は。」


そう呟く和葉の目はとても寂しそうで、やりきれない気持ちになる。
どこの誰かも分からない男に、和葉は泣かされている。
それなのに、俺はこうやって傍にいてやることくらいしか出来ない。


「彼氏にな…フラれてん。他に好きな人が出来たんやって…
ほんま…アタシ、男見る目ないなぁ…」

力なく笑う和葉を見た俺は、唇をグッと噛んだ。


―俺は和葉以外の女、好きになったりせぇへんで。


キィー―…キィ―…

和葉はブランコを漕ぎ出した。


行ったり来たりを繰り返すブランコを見て思った。

『俺達みたいやな。』


勇気のない俺のせいで、和葉は他の男のところへ行ってしまう。

もう、戻ってこないんじゃないかって何度も思うけど…

ブランコのように、一度行ったら戻ってくる。
でも、すぐにどこかへ行ってまう。
ずっと戻ってくることはない。


もうそろそろ行ったり来たりは嫌やなぁ―…


もう、ちゃんと戻ってくるか…分からへんしな。



「…俺にしとけばええねん。」


「…えっ?」



「ここに居るやろ。ええ男。」


和葉は目を見開き、驚いた様子だったけれど
少し経ってから優しく微笑んで言った。


「やっぱりアタシ―…


『男見る目ないみたいや。』」


「…アホ。」

俺が和葉にそう言うと、和葉は目に涙をためて俺に抱きついた。


「ようやく…平次んとこに戻ってこれた…」

きゅっとしがみ付く手に力が入る。


―「平次…『ただいま。』」


ようやく…ちゃんと戻ってきた。


「帰ってくんの、遅いわ。」


俺は冷えてつめたくなった和葉の手を握り、抱きしめた。




―『おかえり』和葉。








※ブランコを見ていて、よく思ってました。
平次と和葉ちゃんの関係みたいやなって…
付かず離れずみたいな…ちょっと違うかな?
言葉にはうまくできないのですが…
最初、和葉ちゃんには平次以外の彼氏が居る設定ですが
でも、最後には二人でハッピーエンドにしたかったんです。
ちゃんと、平次も和葉も二人とも同じくらい大好きなんです!
そこのところは分かってやって下さい!!

2011/10/23




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