毎日は平和 Short | ナノ
冬の温もり




ふるりと身を震わせて白い息を吐き出した。
また、この時期が来たのだとマフラーに顔を埋める。
静かに歩けば霜柱が音を立てた。

「おはようございます」
「あら、和葉ちゃん。おはようさん」

今日も寒いねえ。朝起きるのが億劫やわ、と苦笑しながらも
既にきっちりと和服に身を包んだオバチャンは、いつ見てもかっこええ。
数度言葉を交わしたあと時計を見て平次の寝ている部屋へと急いだ。

「平次ー、起きとる?」
「……」

呼びかけても返事の無い部屋。
今日も起きていないらしい。
ばれているのかセットしてある目覚まし時計のアラームも解除してあった。寒いのか、顔まで布団を被って眠っている。
事件や剣道で疲れとるのも分かるから、休ませておきたいとも思うけど学生の本分は勉強やもん。
出席日数も足りひんようになって一緒に卒業出来ませんなんてことになったら嫌やからね。

「平次はよ起きて」
「−…」
「平次ー」
「ん、」

ん?「ん、」って何やの。
起きる気無いやん。

「平次、遅刻してまうよ」

ベッドに座り、布団を捲った。
さすがに寒いのか平次が唸るように目を僅かに開いた。
途端、アタシの目の前が真っ暗になった。どうしたのかと慌てていると、隣から小さな声が聞こえる。

「…静かにせえや、朝からうるさい」

平次がアタシの手を引っ張りベッドへと引きずり込んでいたようだった。
頭まで隠れるように布団がかけられれば朝日は遮断される。
間近に感じる平次の気配に胸が高鳴るのを必死に隠した。

「うわ、和葉冷たい」

ぴとりと指先が触れる。

「外寒かってん」






「ほら、これならぬくいやろ」

抱きしめられれば背中から温かな体温が伝わってきた。



2014/12/18