毎日は平和 Short | ナノ カサノハナ






ぽつぽつ、と雨が降って来た。

バサッと傘を開く。
隣でも、傘を開く音がする。

和葉と、俺の傘。


「傘ってお花みたいやと思わへん?」

「なんやねん、いきなり」

「せやって、そう思ったんやもん」


くるくると、傘を回しながら歩いて行く小さな子供たちの姿を見つめながら和葉が言う。

傘さして歩いてるだけやと思うのに、コイツはそれを花だと。


でも、不思議と嫌な気持ちも少しだけ気にならなくなって。
和葉が花や、って言えば俺もそんなふうに思えてくる。



「子供の傘って、小さくてなんや可愛らしいなぁ」

「まぁ、小さいわな」

「傘ってよう見てみると、色んな色で可愛いのんいっぱいやね」



ふわっとした笑顔で、嬉しそうに話す。

雨やっちゅうのに、気分沈むどころか楽しんでるやんけ。


(…なんや、子供みたいやな)


それでも、そんな純粋さが和葉の良いところでもあったりするからそれを口に出して言うことはしない。



「お前のは、オレンジ色やな」

「そうやねん、可愛らしいやろ?」

「お前らしいな」



いつもなら鬱陶しく感じる雨音が、さほど嫌ではない。
コイツと一緒に居るからなのか。


ふと、隣を見る。



小さなオレンジ色の花が、雨音を聴きながら咲いていた。









2013/08/10
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