毎日は平和 Short | ナノ
朝の道





いつも通り二人で登校する朝のこと。



「なんや、急に冷えこんできよったな」

冷たい風が吹いてきて、思わず口に出てきた。


「本当やね、」

昨日は温かかったのに今日はコート着てマフラー巻いても寒いもん、と和葉は大げさに震えてみせる。



「風邪引くなや」

「気ぃつけんとやね」


それから会話は途絶えて、ただ無言で朝の通学路を歩いた。



「…っくしゅん」


和葉が寒そうにくしゃみをした。


「言わんこっちゃない、風邪ひいとるがな」

「大丈夫やよ」


白い手が赤くなっていた。
そないに寒いやろうか。

自分の手を見てはっと気付く。
手袋してへんやんけ。




「和葉、」

「ん?」


「ほれ、これしとき」



自分のつけてた手袋渡して、自分はポケットに手を突っ込む。


「平次のやから、大きくて不恰好や」

なんて文句を言いつつも、なんや俺には嬉しそうに見える。




「かわりに明日の弁当は、俺の好きなモン入れてや」

「ええよ、分かった」


こんな子供じみたこと言ってられるのもあとわずかかもしれん。


あと何回この道を二人で通れんねやろな…





高校生でいられるあとわずかの時間を、こいつが笑顔でいられるように。




明日も、二人でこの道を歩く。




2012/12/17