毎日は平和 Short | ナノ
いつまでも
いつまでも。
いつまでも―…
ずっと、コイツは俺の隣に居るもんやと思っとった。
「どうしたん、平次?」
首傾げて、俺の顔見て。
しっぽ揺らして、笑顔見せて。
「…なんもないで」
そう言ったら、和葉は「へんなの〜」と言ってまた昼飯を作り始めた。
「なぁなぁ、平次?」
「なんや」
「アタシな、今週の日曜日に映画行くんよ」
トントントンと野菜を切る音が同じリズムで繰り返されながら、なんも考えんと俺に話しかけてきよったコイツ。
「ほぉ〜、女は映画っちゅーもんが好きやな。あんなん寝てまうのがオチやんけ」
「お前と一緒に映画なんぞ見たい思う男、居らんやろ。寂しいやっちゃなぁ」と、少しからかったろ思って言ってみたのに「ちゃうよ、隣のクラスの男子に誘われてるんよ」って思いもかけない返事が返ってきよった。
俺は心のどっかをぎゅっと掴まれたんやないかって、そう思うくらい苦しくなる。
これがなんなのか分からへん。
でも、こうなるときはいつもコイツが関わっている。
「なぁ、その誘いどうしてんねん」
「う〜ん、その男子のこと実はよく知らなくて…でも、せっかく誘ってくれたんやしどうしよって思っとってね」
なんや、曖昧な返事やな。
「断っとけ」
そう言うと、「なんで?」って目でこっちを見る。
「相手のこと知らんと、そいつに失礼や思わんか?お前も人が良すぎんねん。断っとけ」
「うん…そうやね」
「なんなら、俺が断ってもええで」
そいつの顔、いっぺん見ときたいしな。
「自分で断れるからええよ」
「さよか、ちゃんと断っとけよ」
「分かってるって」
―…なんやコイツ、ずっと居ると思っとったのにアカンやんけ。
しっかり手ぇ繋いどかんと、どっか行ってしまうやんけ。
気ぃ抜けへんやつやな〜
他の男の隣に居るなんて、百万年早いんじゃボケ。
「なぁ和葉、今週の日曜日バイク乗ってどこか行くか?」
「うんっ、行く!」
飼ってますって印に首輪つけて、エサやって、たまには散歩に連れて行って。
犬飼うんなんか、面倒なことばっかりやんけ…
って思っとったけど。
でもまぁ…
ポニーテールの犬一匹くらいなら、貰ってやってもええで。
2012/05/17