「ずっとここに居ていいんだぜ。」
聞きたかった言葉が彼の口から、彼の声で聞こえてくる。
「…本当に?」
「あぁ、もちろん」
彼はわたしに向かって笑顔を向けた。
これは夢…
きっと…夢なの。
「こんなにも都合の良いことなんか、起きない」って頭が言っているのに
心は「素直に受け入れてしまえばいい」って言う。
「灰原は、灰原だよ。お前は変わったんだ。もう、組織のことなんかに怯えなくてもいい」
彼の言葉に、これが夢なのか現実なのか…
そんなこと、どうだって良いと感じてしまう。
彼の傍にいられるのならば、もう何だっていいような…
「俺がお前を守ってやるから」
彼はわたしに手を差し伸べ、明るい方へと導いてくれようとする。
わたしには明るすぎて、眩しすぎるくらいの道へと…
「…工藤…くん…」
わたしはその手をとることは出来ない。
暗い箱の中に一人、取り残されて。
誰も居ない真っ暗な場所へと自分の足で歩いて行く。
「…灰原?」
また、彼の声が聞こえる。
目を開けるとそこは真っ暗で、カチっと音がすると部屋が明るくなった。
「こんな真っ暗なところで研究か?」
彼は部屋の中へ入ってきて、わたしにコーヒーを渡す。
「うなされてたみてぇだけど、大丈夫か?」
彼の言葉でわたしが今まで見ていたのは夢だと分かった。
「…また、夢を見たのね」
「…?なんか言ったか?」
「いいえ、こっちの話よ。」
「そうか、博士が腹減ったから夕飯にして欲しいって言ってたぞ」
「分かったわよ、今から作るから。あなたも食べていく?」
そう言ったら彼は驚いたようにしていたけれど、わたしが部屋から出て行くときに「おう、食べて行く」って返事が聞こえた。
あなたはいつも、わたしを現実へと導いてくれる。
2012/04/28