◎ 『 告白 』
目覚めの悪い朝だった。
昨日も夜遅くまで考えていたし、結局寝ていたのか、起きてぼーっと考えていたのかすら分からない。
昨日の疲れがとれているところをみると、浅い眠りを何回か繰り返していたのだろう。
頭と心のわだかまりは何も変わってはいないが。
朝早く高校へ着く。
まだ、誰もいないであろう教室に向かうと一人の人影があった。
「……」
その人影の正体が分かった俺は足が止まる。
教室に入ることを戸惑い、家へ引き返そうとすらしていた。
「…快斗?」
その声が俺の足を引きとめる。
ここで逃げてしまったらいけないと自分に言い聞かせ、普段どおりを装って青子の顔を見た。
「早いな、青子」
「……」
青子からの返事がない。
今の俺の真っ黒い心が顔に出てしまったのだろうか。
「あの…さ、―」
俺が口を開くと、先に青子が言った。
「青子…待ってる。快斗がちゃんと話してくれるまで、待ってるよ?」
おこちゃまだと思っていた幼馴染みは、俺が思っているよりずっと大人になっていた。
「待ってても…いい?」
青子のことを苦しめてしまうかもしれないけれど…
それでもいいって真剣な目で俺を真っ直ぐ見つめるから。
「あぁ、頼む…待っててくれ」
最後に待っているのがハッピーエンドだなんて絶対にない。
だから…
身勝手を叶えてくれるなら、話せる日なんて永遠に来ないでくれ。
ごめんな、青子……
嘘ついて。
待っててなんて欲しくない。
それがお前のことを傷つけるって分かってるから。
でもアイツはきっといつまでも待ってる。
俺の口から告げられる、その日が来るまで。
「待ってる―」
その四文字が俺の心に重く圧し掛かった。
2013/05/04
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