今日も天気は快青です | ナノ

 『出会いたくない恋人』

「あ…。」


視線の先には俺とよく似た顔。
工藤新一の姿があった。


「なんだよ。俺の顔をみるなり『あ…。』ってよ。」

元の姿に戻ったらしいと聞いていたが
こうやって工藤新一の姿で会うのは初めてだ。


「初めまして、工藤新一くん。こんなところで一体なにを?」

「コナンのときに会ってたじゃねぇかよ。」

もはや隠す必要もないということなのだろうか?

それとも、この怪盗に高校生探偵の工藤新一は
気を許しているということなのだろうか?

自分が江戸川コナンであったことを隠そうともしない。


「この姿では初めましてですよ。」

俺がそう言うと工藤新一は「そうか?」と言ってポケットに手を突っ込んだ。


「じゃあ、初めまして。キッドさんよ。」


自信ありげな言い方はコナンの時と同じ。


「さて、では私からの質問に答えていただけますか?」

「答えられる範囲でな。」

工藤新一は面白そうに俺の顔を見る。
ハットを深く被っているから顔はみられないと思うが…



「ごほん。」わざと咳払いをして、俺は工藤新一に聞いてみた。


「何故あなたはこんな所に?」


満月の月明かりが綺麗にみえる真夜中。
時計の針はそろそろ1時をさそうとしている。

勿論1時過ぎでも、この高校生探偵ならば
起きていてもなんの驚きはない。


しかし…疑問点は場所だ。

ここは東京都内。
薄暗く、人気のない路地。

こんな入り組んだ路地に何故、工藤新一の姿が?



「さぁ…なんでだと思う?」


質問に質問返しとは…あなたらしい。


「私に発信機でもつけたのですか?」

「だったらどうする?キッドさんよ。」

相変わらずこの人は答えを返さない。
答える気すらないのかもしれない。

まぁ、俺に発信機がついているなんてことはないのだから
答えは必要ないのだが。


「なんで俺が工藤新一だって分かったんだよ。」


俺が黙っていると、今度は向こうから質問を投げかけられた。


「何故でしょうね?」

「あぁ、不思議だな。」

工藤新一は答えが返ってこないことを分かっていたかのように
なんの躊躇いもなく話を続ける。


「俺も驚いたぜ。お前に正体がバレた時。」

「そうですか。」

「お前だって正体がバレたら驚くだろ?
なぁ、キッド…いや、黒羽快斗。」


「…っ?!」


一瞬、状況が分からなかった。

何故…高校生探偵が怪盗の俺の本名を知っている?


このことは、一人しかしらないはず…

それなのに何故…!!


「お〜?ポーカーフェイスのキッドさんよ。
驚きが顔に出まくりだぜ?」


「なんで…俺の名前を?」


怪盗キッドの喋り方など忘れ、俺は素で聞いていた。


「ふっ…探偵をなめてもらっちゃ困るんだよ。
それと、お前も俺の正体を見破ったんだ。これでお互い様だろ。」

「…。」


何も言えなかった。


「それと、お前は俺のことをマスコミに『出会いたくない恋人』とか
なんとかって言ってくれてるみてぇだけど
俺はお前の恋人になった覚えはねぇよ。」


「…んなこと分かってるよ。」


俺が小さな声で言うと、聞こえたようで
「ふっ…まぁ、そうだよな。」と笑った。



「じゃあな。快斗。」

そう言って工藤新一は俺に背を向けたが
何かを思い出したように俺の方に向きかえった。


「お前の正体をバラすような卑怯な真似は好きじゃない。
だからお前の正体を警察に言うなんてことはしないから安心しろ。
正々堂々と一対一の勝負をするのを楽しみにしてんだからよ。」


そう言うと工藤新一は、まだ明るい東京の街へと歩いていった。



―『工藤新一』お前はやっぱり…

俺にとって『出会いたくない恋人』だよ。






※あとがき

キッドの正体が新一にばれたら…
どうなるんでしょうかね?
流祈夜の考えと致しましては、新一は正体を警察にバラすなんてことはしないと思うのです。


2011/11/20



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