最近、彼の元気がなくて…心配です。
「今日さ、一緒に帰れないんだ」
いつもだったら「俺、先帰るから」って言うはずなのに。
「そっか…仕方ないね。また明日」
どこか見つめるところは遠くて。
元気が無いなって思ってしまうのは、気のせいなのかな。
「最近…なにかあった?」
「どうして真稀がそんなこと聞く訳?」
「…元気ないから」
「…そう見える?」
黙っているわたしの頭に手を置いて「大丈夫、気にすんな」って彼は言った。
学校帰り、ボーっとしている彼を黙って見てた。
もう教室にはわたしと彼しか居なかった。
「久しぶりに二人で帰るか」と彼から言ったのも、わたしにはどこか不自然なようにしか思えない。
「ごめん、ちょっと考えてた」
「大丈夫?」
「あぁ、平気」
わたしは彼の隣を歩く。
一緒に帰るからって彼は何かを喋るってことはしない。
わたしはいつも喋っていたけれど、今日は一言も喋らずにただ彼の隣を歩いていた。
「なぁ、真稀」
「ん?」
彼のほうを向く。
彼は少しの間、黙ったあと「ごめんな」って謝った。
「…幸雅はさ、幸雅のままでいいんだよ?」
無理しているようにしか思えなくて。
「無理しないで?」
そう言ったら彼は少し目を見開いて、でもすぐに優しい顔をして。
「そっか。…俺のままでいいんだ」って言った。
むしゃくしゃしていた心の感情や、悩んでいたことがあったのかもしれない。
でも、そんなことさえ小さなことなんだって思ってくれたらいいなって。
嫌なこと、悩んでいること。
少しでもわたしが力になれたら嬉しいから。
彼の口から「ありがとな」って言葉が普通に出てきた。
「なぁ、真稀?」
「なに?」
「…やる」
渡されたのは、小さな箱。
「今日、誕生日だろ」
中に入っていたのはネックレス。
月と星をモチーフに作られていて、とても綺麗。
彼は携帯を取り出し、ストラップを指差した。
ついていたのはわたしのネックレスに似たストラップ。
きっと、おそろいにするために探してくれていたんだ。
「ありがとう///」
「…ん」
「今日はやけに素直じゃん」
「俺はいつも素直だけど?」
そう言った彼はいつもの彼で、心のどこかでほっとしている自分がいた。
2012/07/08
お題配布元『確かに恋だった』様