暑い夏はあっと言う間に過ぎて。
風が冷たく感じる秋になった。
彼との関係は相変わらずで、彼は優しかったりつめたかったり。
まだ、彼の家にも行ったことがなかったり。
そして、わたしの頭も相変わらず…
今日もいつもの補習で、彼とは一緒に帰れなかった。
「はぁ…」
自然と出てしまった溜息さえ、わたしの苛々の原因となる。
とっくに帰ってしまっている彼の家に寄ってみようかと思ったが、薄暗くなっている空を見るとこのまま自分の家に帰ったほうがいいんじゃないかと思ってしまう。
「まぁ…行きたくても、家知らないから行けないんだけどね」
雨が降っていないのが唯一の救い。
靴を履いて、真っ暗にならないうちに帰ろうと小走りで玄関を出た。
「遅ぇよ。」
玄関の外には彼の姿。
壁に寄りかかって立っていた。
「なん…で?」
授業が終わったのは二時間も前なのに。
「…ずっと…待っててくれたの?」
「…。」
彼は黙って何も言わない。
「分かってるよ、偶然でしょ?そんなに自意識過剰じゃないよ…」
「ちげぇよ」
「ぇ…?」
「『え?』じゃねぇよ。」
彼はちょっと不機嫌そう。
「そうだよ、お前がくるのをここでずっと待ってた。」
彼はそう言ってわたしの手を握り、顔を隠すように前を歩いた。
彼の大きな手は冷たくて、少し赤い。
本当にずっと待っててくれたんだなって思って、わたしは嬉しくなった。
「ほら、行くぞ」
前を歩く彼がわたしに聞こえるくらいの小さな声で言った。
「来たかったんだろ?俺の家」
付き合って二ヶ月。
初めて彼の家に行きました。
お母さんが居て、何言えばいいか分からなかったけど…
「俺の…彼女だから」
照れてた彼を見るのは初めてだったかも。
いつもクールな彼が、照れながらわたしのことをお母さんに紹介してくれた。
ゆっくりだけど、わたしの恋は前進中。
お題配布元『確かに恋だった』様
2012/06/15