兄貴が彼女と別れた。
別れないでくれよ。ってずっと心のどこかで思ってた。
そうすれば紗枝は俺の方を向いてくれるかもしれないと思っていたから。
それなのに…兄貴は彼女と別れた。
「兄貴、なんで別れたの」
「合わなかったんだよ、きっと」
別れたばかりだというのに何故だかさっぱりとしている兄貴に腹が立った。
そんな理由で別れるなら、最初から付き合わなければよかったんだ。
そうすれば紗枝が悲しむこともなかっただろうに。
「紗枝ちゃん、可愛くなったよね。」
ふいに兄貴が独り言のように言った。
「可愛いよ、アイツは」
俺も独り言のように呟いた。
兄貴がそう言ってたよ。って君に伝えたら
君はどんな顔をするだろう?
嬉しそうに喜ぶんだろうか?
君が幸せならそれでいい。
俺はそんな幸せそうな君を見ながら「兄貴、彼女と別れたよ。」なんて
ちゃんと君の目をみて言えるのだろうか?
君に気づかれないように…この想い、奥に隠して。
「紗枝。」
「なに?」
「…兄貴、別れたよ」
お題配布元『確かに恋だった』様
2012/02/24