家に着き、鍵をあける。
一人暮らしのアパート。
真っ暗な部屋に電気をつけた。
「…はぁ」
自然と溜め息が出る。
今日、署長に言われたことが原因だ。
「高木君が…左遷…」
あまりに突然で予想もしていなかった出来事に対して
私の心だけがついてこれない―…
「伝えろって…どうやって高木君に伝えればいいのよ…?」
カップ麺が出来るのを待ちながら、そんなことを考える。
「明日…伝えよう」
そう決めた。
―次の日の朝
元気よく出勤してきた高木君の顔を見たら
左遷の話など切り出すことが出来なかった
私は打ち明けなくちゃいけない。
でも
どうしていいか分からない。
笑いながら言えばいいの?
それとも
深刻そうに言えばいいの?
考えれば考えるほど
分からなくなってくる。
「佐藤さん?」
「あっ、ゴメン。えーと、連続ひったくり犯の聞き込み調査よね?
じゃあ、私は現場近くの店の聞き込みするから、
高木君は被害者の話を聞いて。」
「はい、了解しました。」
被害者の話を聞いてから
現場の聞き込みに行っても良かった。
けれど、無意識のうちに
私は高木君と離れて行動することを選んでいた。
2013/02/12