01
ある日の朝―。


「おはようございます。佐藤さん。」

今日もいつものように出勤する。


「う…ん。おはよう。」

私はなるべくいつも通りに高木君の挨拶に答える。


「どうしたんすか?いつもの元気がないみたいですけど…」


いけない。
まだ高木君は知らないんだよね。

「ううん、気にしないで。昨日、ラーメン食べ過ぎちゃってさぁ」

「そうなんですか。佐藤さんっぽいですね」

「私っぽいてどういうことよ。」

「いやいや、大食いてわけじゃなくて、佐藤さんが悩み事なんか珍しくて。
でも僕の気のせいでしたね。」



高木君はいつもの笑顔で私の隣で笑ってる。
だけど、彼の笑顔が見れなくなるなんて
考えたくもない。
いや、考えられないのよ。



私が高木君の左遷の話を聞いたのは、昨日の警察庁の駐車場でのことだった。






「佐藤くん。ちょっといいかね?」

私は署長に呼び止められた。

「署長。お疲れ様です。」

「君に話がある。」

「なんでしょう?」

「実は高木くんのことでなのだが」

「…高木くん…いえ、高木刑事のことですか?」


「あぁ。本部から連絡が入ってな左遷されることになった」




私は頭の中がフリーズした。

「いったい何で?」

「ちと高木君には本庁の仕事は厳しいて思ってね。」

「でも、彼は本庁に来て沢山仕事をこなして頑張ってます。
実績も上がってるのになぜ!?」


「佐藤君、分かってくれ。もう決定事項なんだ。どうしようもできない。」


署長は高木君に伝えてくれと言って帰って行った。



なんで?
あんなに頑張ってたのに。


やっと夢の本庁に勤めることができたってあんなに喜んでたのに。


彼と一緒にいた時間が長い私にとって、この話を伝えることは辛い。



私はひとまず家に帰り、高木君にどう伝えるべきか考えることにした。



だけど、この時の選択が間違ってるなんて
あの時の私には検討がつかなかっただろう。



2013/01/11


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bkm
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