ある日の朝―。
「おはようございます。佐藤さん。」
今日もいつものように出勤する。
「う…ん。おはよう。」
私はなるべくいつも通りに高木君の挨拶に答える。
「どうしたんすか?いつもの元気がないみたいですけど…」
いけない。
まだ高木君は知らないんだよね。
「ううん、気にしないで。昨日、ラーメン食べ過ぎちゃってさぁ」
「そうなんですか。佐藤さんっぽいですね」
「私っぽいてどういうことよ。」
「いやいや、大食いてわけじゃなくて、佐藤さんが悩み事なんか珍しくて。
でも僕の気のせいでしたね。」
高木君はいつもの笑顔で私の隣で笑ってる。
だけど、彼の笑顔が見れなくなるなんて
考えたくもない。
いや、考えられないのよ。
私が高木君の左遷の話を聞いたのは、昨日の警察庁の駐車場でのことだった。
「佐藤くん。ちょっといいかね?」
私は署長に呼び止められた。
「署長。お疲れ様です。」
「君に話がある。」
「なんでしょう?」
「実は高木くんのことでなのだが」
「…高木くん…いえ、高木刑事のことですか?」
「あぁ。本部から連絡が入ってな左遷されることになった」
私は頭の中がフリーズした。
「いったい何で?」
「ちと高木君には本庁の仕事は厳しいて思ってね。」
「でも、彼は本庁に来て沢山仕事をこなして頑張ってます。
実績も上がってるのになぜ!?」
「佐藤君、分かってくれ。もう決定事項なんだ。どうしようもできない。」
署長は高木君に伝えてくれと言って帰って行った。
なんで?
あんなに頑張ってたのに。
やっと夢の本庁に勤めることができたってあんなに喜んでたのに。
彼と一緒にいた時間が長い私にとって、この話を伝えることは辛い。
私はひとまず家に帰り、高木君にどう伝えるべきか考えることにした。
だけど、この時の選択が間違ってるなんて
あの時の私には検討がつかなかっただろう。
2013/01/11