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「佐藤さん…「イヤよ!!勝手に思い出で終わらせないでよ」



「私は…高木くんと離れたくない!
高木くんと離れるなんて考えられないの!」



一度だけ見たことのある表情。

確か僕が犯人に撃たれて腕を怪我した時にも
こんな顔をしていた…



「佐藤さん…」



涙を堪えて僕を見つめる佐藤さんにかける言葉が見つからない。

僕なりに、慎重に言葉を選びながら話をする。




「…僕、きっとまた本庁に戻ります。
佐藤さんに追いつけるように、もっと努力して―…」


「私に追いつく?なに言ってるのよ……私より、あなたの方が上よ、高木くん。
あなたみたいに優しい人…私には勿体ないくらい…」



佐藤さんの顔が僕の顔の真横にある。
僕は佐藤さんに抱きしめられていた。



「…絶対よ。『きっとまた』じゃなくて、絶対に本庁に戻ってきて…」



静かに涙を流す佐藤さんがいた。



僕なんかのために…こうやって涙を流してくれる人がいる。
僕を大切に思ってくれている人がいる



「…佐藤さん」


僕はなるべく優しい声で佐藤さんの名前を呼んだ。



「…なによ、僕には無理だっていいたいの?!そんなのイヤよ!私は…私は―…!」



「佐藤さん、僕は…必ずまた戻って来ます。」


「高木…くん?」



こんなにも僕を思ってくれる人を悲しませたりしてはいけないと思った。



「必ず戻って来ます」


左遷されてしまう悔しさと佐藤さんへのドキドキと、よく分からない感情のまま僕は佐藤さんを抱きしめ返した。



「僕だって佐藤さんと離れたくないですよ…僕が戻るまで待っててくれますか?」


心臓がどうにかなりそうなくらい緊張していた


「……」


佐藤さんからの返事がない。



そういえば、抱きしめ返した後くらいから急に重くなったような…

そんな失礼なことを考えて、横を向くと
佐藤さんはすっきりした顔でスヤスヤと寝息をたてていた。

寝ると人間は力が抜けて体重を重く感じるらしい。



「…寝ちゃったんですか」



佐藤さんは安心してくれたのだろうか


せっかく佐藤さんに自分の思いを伝えたのに
思いを伝えたい相手が寝ているのでは話にならない


僕はまたソファーに佐藤さんを運び、上着をかけた



「高木刑事…頑張れ…」


夢の中でも僕は佐藤さんに応援されているらしい



「分かってます」


僕は一言佐藤さんに言ってから佐藤さんの家を出た。
テーブルの上に一枚の紙だけを残して―。





―『必ず戻ってみせます 高木』




次の日、それを見たであろう佐藤さんからメールが来た。



―『待ってるわよ 佐藤』





他に言葉なんか必要ない


僕は必ず戻ってみせる

大切な人のために






2012/04/14


End


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