僕はおじさんの頼みを断ることが出来ず
佐藤さんを送っていくことになった。
佐藤さんを背中に背負い
家へと向かう。
「…高木君……」
耳元で佐藤さんの声がして驚いたが
寝言だと分かるとまた歩き始めた。
僕はタクシーを止め、佐藤さんの家に向かった。
タクシーの中で佐藤さんは眉間に皺を寄せ唸っていた。
「つきましたよ」
僕は佐藤さんの腕を肩に回し、部屋の中に入れた。
寝室まで運ぼうかと迷ったがさすがに失礼だと思い
リビングのソファーに寝かせる。
風邪を引かないように僕の上着をかけ、その場を立ち去ろうとした。
すると
佐藤さんは僕の袖を掴んで離さない。
「行かないで…。」
その言葉は寝言だと分かっているのに胸が痛い。
僕は佐藤さんに近寄りそっと頭をなでる。
「どこにも行きませんよ。」
そう言うと佐藤さんの力が緩み袖を離してくれた。
2013/04/07