02
「だから、あなたは元に戻らなければいけないって言ってるでしょ?!
あなた、自分の言っていることが分からないの?」
「んな、好都合なことはないよな。悪い…忘れてくれ。」
もし、俺が戻ったら。
きっと元の生活に戻っていくのだろう。
事件を解いて、高校に行って、光彦や元太、歩美ちゃんとは会わなくなって。
灰原はきっと戻らない…
そうしたら、灰原とも会わなくなるのだろうか。
小さくなる前の、そんないつも通りの生活に戻るのだろうか。
もし、俺が戻らなかったら?
このままコナンとして、少年探偵団のみんなとも一緒に居られる。
小学校に通って、何年かすれば高校生になって。
ずっと灰原の近くに居られる。
「気持ちが変わらなかったらって…あなたらしいわね。」
戻らなければいけないのか?
本当に、戻るべきなのか…
「…私をそんなに待たせるの?」
「え?」
「私がその十年の間に薬を作ればいいんでしょ?期限はあと十年。それまでに作ればいいだけのことよ。私が作れたらあなたは元に戻る。もしそうじゃなければ…いえ、なんでもないわ」
椅子に座りながら携帯を片手に持ち、もう片方にはシャーペンを持ってノートをまとめていた俺だったが、いつの間にか手は止まっていた。
「そんな都合のいいことが十年後に起きることを願ってるわ…」
「灰原…?」
聞き取るのがやっとの小さな声で、灰原が言ったことを俺は聞き逃さなかった。
(そう…。私はこの場所を忘れないように…あなたを思い出すわ。
たとえ…離れることになったとしても…ね。)
2012/07/14