約束 | ナノ


 16



「っ…なんだよそれ…お前だけずりぃだろ…」


「約束を破ろうとした罰よ。
あと五年、我慢しなさい。
約束の日まで、私はあなたと友達のまま…」


「罰って…まじ?」


「『まじ』よ。私が他の男にとられないように、せいぜい努力することね。
じゃあ…」

そう言って去ろうとする灰原をもう一度呼び止める。


「おっ…おい!」

すると、灰原の足が止まり


「はぁ、しょうがないわね。」

そう言ったあと、灰原は振り返り俺の元へと駆け寄ってきた。



チュッ



何かが頬に触れる。

灰原の顔が真横にあった。




 * * * * * 


「ははははは灰原…
こういうのは男からじゃ?」


工藤くんは意外にも驚いているようだった。


「じゃあ五年後は工藤君からして。」

「へ…?」


「それまで私の頬はあなたで予約しておくから。」


「あと…五年もか?」

工藤くんは『五年』と聞いて少し不満そうな顔をする。



「えぇ。そうよ。あなたが変なことをしたら付き合わないわよ?」

「…そっ、それは…」

「あなたが頑張れば、少しくらい考えてあげるわ。
朝ごはんでも作ってあげる。」

「本当か?」


嬉しそうな顔をするのは本当に子供のようだ。



「デートは?」


調子に乗りやすいのも工藤くんらしい。


「友達はデートなんかしないわ。」

「手、繋ぐのはいいよな?」


「駄目。」


「…まじ?俺ら…高校生だよな?」



「今は残念ながら小学生よ。
周りにそんなところ見られたら、変に思われるでしょ。」


きっぱり言ってあげた。



「…お前っ…俺が我慢出来ると思ってんのか?」

「あら?あなたは私と付き合えなくてもいいのかしら?」


その言葉に、何も言い返せなくったのか
工藤くんは苦い顔をしながら言った。




「っ…分かったよ。出来るだけ我慢してみるよ。」

「そうしてちょうだい。」




あなたは私が考えていることなんか全く知らないでしょうね…



工藤君。
私はただ…こわいのよ。

あなたのことが好きになれば好きになる程
あなたとの思い出が
増えていくのがこわいだけなの…

あなたと別れなければならない日が…いつか来てしまいそうで…


ただ一つだけ願ってもいいのなら…


何も怯えないで彼とただ、普通に日常を過ごしたい。


本当に…心から笑える日がくることを願って―…



END


2012/12/01



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