15
「こんな小さな取り引きにはあなたは一丁しか持ってこない。
いつもそうだったわよね?」
「ハハ、良い度胸だな。だが―」
バラバラ―…!!
「工藤くん、上を見て!!」
壊れた屋根の隙間からヘリが飛んでいるのが見えた。
「アニキ、早く乗ってくだせぇ」
空中にはヘリが待機している。
「じゃあな、ガキども。楽しませてもらった」
ジンとウォッカはヘリへと乗り込む。
「おい!!待てっ―!!」
「もう追いつけないわ…はぁ、また逃げられた」
灰原に止められ、俺は追うのをやめる。
「でも取引を中止できて良かったわ」
「…ねぇよ」
「なに?」
「…よくねぇよ!!
俺がどんだけ心配したか分かってんのか!?」
「何よ。私はこうやって生きてるじゃない。」
「もし弾が少しずれて撃たれてたらどうするつもりだったんだよ!」
「…私が生きていられるのは…そのくらいの確率だってことよ。」
ギュッ―…
「俺は…すげー心配だった…お前が撃たれた時…
すげー心配だったよ。心配かけんなよ―…」
そう言って灰原を抱きしめた。
「でも…ジンとウォッカ…また捕まえ損ねた…
解毒剤の情報も手に入れられなかったしな…」
「きゃっ…痛い!工藤君、痛いからっ!!
おおおちついて」
「あっ、わりぃ」
灰原に言われ、俺は抱きしめていた手を離した。
「はぁ、あなたの悪い所はすぐ熱くなることね。
じゃ、私は仲間に今日のことについて説明しなくちゃいけないから。」
灰原は俺に背を向けて、行こうとする。
「おい、もう行くのかよ」
「えぇ、ごめんなさい
普通なら空港まで送りたいけど
私は今、組織から身を隠してるの。
空港という大勢の人がいる場所なんて安易に近づけない。
もう、私がシェリーだってことは組織は知っているもの。
幸いあなたが工藤新一だってことには気づかなかったみたいだけれど?
あなたも早く「江戸川コナン」という普通の小学生に戻った方がいいわ。
いつまでもここにいたら危険よ。」
「でも、やっぱり…」
「約束を忘れたの?
私は今まで沢山の人を裏切ってきたわ。
仲間とか関係なしに。
だから人生で初めての好きな人との約束ぐらい守らせてよ。」
「…灰原…それって」
「えぇ…そうよ…あなたが私の…初恋の人…」
「…灰原…俺も!俺もっ灰原のこと―…!!」
そう叫んだが灰原に止められた。
「それ以上は言わない約束よ。」
2012/11/24