約束 | ナノ


 13



「…早く逃げて!!」

さっきの物音が工藤君だと真っ先に気付いた私は大声で叫ぶ。


「逃がすか。」

ウォッカはジンの命令によって工藤君の元へと走って行った。




「早く逃げて。私のことなんか気にしないで、早く!!」


「とんだ茶番劇だな。せいぜい逃げればいい。
どうせ捕まるのが関の山だ。」




私は工藤くんを守る為にジンの意識を私へと移そうとした。


「撃つなら私を撃って!!
あなたも警察に情報が漏れるのは避けたいでしょ。」


「お前が姉以外の人間を庇うなんて、血迷ったか。シェリー」


ジンは私のことを嘲るように笑った―…


「だけど、条件がある。工藤君は殺さないで。」


なんとしても大切な人を守りたくて…

工藤くんは私と違って光の人間だから。



だから私はその時、死を覚悟した―


「工藤…?あの目障りな探偵か。
いいだろう。お前の願い道理、撃ってやる。
命拾いしたな、工藤新一。」



 * * * *



抵抗も虚しく俺は捕まってしまった。
俺はウォッカに縄で縛られ身動きが出来ない。




「撃つなーっ!!」

「ウォッカ。よくやった。」

「なんてことないですぜ兄貴。」



「何捕まってるのよ!!」


灰原は捕まった俺を見てすごく悲しそうな顔をした。


「お前一人、危険な目に合わせられる訳ねーだろ!!
お前を守るっていったろ!!」


「ばか…あのまま逃げていれば、あなただけでも助かったのに」




「シェリー。この男に言い残したことはないか?」

ジンは冷酷な目を俺に向ける。


「ごめんなさい…本当に約束守れないみたい」


「おいっ、ふざけんなよ!!」

「あなたと私は結ばれてはいけない運命だったのよ」




無理だと決め付けるような瞳で俺にそんな言葉を言う―。


灰原は死を覚悟している。
俺は直感的にそう思った―



だが、俺はあいつに生きて欲しかった―



「何が運命だよ…お前らしくねぇ!
もし運命とかそんなものがあるなら俺が変えてやる!だから…」


「あなたにも出来ないことがあるのよ。
さよなら、ホームズおたくな探偵さん」


諦めたような、そんな表情―…

今までも、こんなふうに諦めてきたのかもしれない…


「終わったか。とても素敵な茶番劇だった
シェリー、楽に逝かせてやる
確か姉も心臓を一発だったな…
フッ
お前も同じようにしてやる。」


「おい、ジン止めろ!!」


「五月蠅い。ウォッカ、アイツを押さえとけ」

「へい、アニキ」



「じゃあね…工藤君。」




「やめろーーー!!」




キィン―っ…!!  

銃声が悲しく木霊した。




「灰…原…?おい、灰原!!」



2012/11/18




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