ユメトビラ | ナノ

「 本音日和 」





放課後、わたしは先生に呼ばれて
先生の手伝いをするはめになってしまった。


でも、これでよかったかもしれない。

一人で何もせんと居ったら、咲斗のこと考えてしまいそうやったし。



「悪いなぁ、放課後に」

「いえ、大丈夫ですよ」


「じゃあ資料室からクラス分の資料と教科書を
運んでおいてくれるか?」

「はい、分かりました」

「頼むで」


先生は会議に行ってしまったから、
重い荷物を一人で運ばなければいけない。

ま、いいか。何回か往復すればええことやし。



そう思って、荷物を持とうとしゃがんだとき


「重いやろ…持つわ」

ぶっきらぼうに聞こえてきたのは、咲斗の声。

振り返らなくても、分かる。





「やっぱり…お前居らんと駄目や」


しゃがんでいたわたしは、ゆっくりと立ちあがった。

その言葉に何も返す言葉が思いつかなくて、
わたしは「告白…は?」なんて聞いてもうた。



「されへんかったで」


「え」


「されへんかったで、告白。」



二回言われても、まだ理解できなくて。




「お前を見とったら分かるって言っとったで。」

「…。」


「ほんまは俺のこと、好きでもなかったらしいわ。
お前に正直になって欲しかったんやて。…ええ親友やな。」


「…そう…やったんや」


そこまでわたしのことを考えてくれる。
そんな親友を持てたわたしは幸せ者やと思う。


でも…そうやったらこんなややこしいことせんでも良かったやん。


気ぃ遣ってもうたやん。わたし。

なんや、アホくさ。




「なぁ、俺やっぱりお前のこと好きやねん」

後ろからぎゅっと抱きしめられて、咲斗の声がすぐ後ろで聞こえる。



「お前は…どうやねん」


遠慮がちにわたしの腕を包み、そう尋ねてくる。


「菜乃の本音…聞かせてくれへん?」


「わたしは…」



高鳴る胸の鼓動を君に気づかれないように
深く、深呼吸して。






「わたしも、好き」





「…最初からそう言えや」


わたしの唇に重なる君の唇。
一瞬がとても長く感じて。



ようやく言えたよ、わたしの本音。



本音日和。

わたしと咲斗の始まりは初夏の晴れた日だった。






2012/07/06

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