「なかせたくなかった」
「…消えるって、どういうこと?」
咲斗は冷静だった。
「バンパイアは血を吸わんと生きて行かれへんって言ったやん」
「…うん」
「それも、ホンマに好きな人の血ぃやないと意味ないねん…俺は菜乃を愛してる」
冷静過ぎて切なくなった。いつかこんな日が来ることを分かりながら…わたしと付き合ってくれていたんだと考えると心が痛む。
「だったら、一緒に居てよ」
わがままだって思われるかもしれない。こんなにも優しい人に、これ以上のわがままなんて罰が当たる。
「居られへんねん…菜乃を傷つけるなんて出来ひん」
でも…
「一人に、しないでっ…」
静かに涙が伝う。
「やめてや、泣かんといて」
壁にもたれ掛からないと座ることさえままならないくらいなのに、それでも尚わたしを大切にしてくれる。
「…泣かせたくなかった」
その言葉が、大切にされてる証。
「でも…やっぱり意味ないよ。咲斗が居ないなんて、意味ないんだよ…」
咲斗に言われた通り、咲斗とは一定の距離を保ちつつ話をする。
「バンパイアが血を吸うってことは、生きるってことでしょ?
…生きる道があるのに自分から命を無駄にしちゃ駄目だよ!
もし…わたしの血で咲斗が今まで通りこうやって傍に居られるなら…」
彼の優しさを無駄にしてしまうと分かりつつも、わたしはその時決意した。
「わたしの血を吸って」
2013/02/01
prev / next