「わかった…ごめん」
「咲斗くん…」
「菜乃、ごめん…」
咲斗くんは申し訳なさそうに、ただわたしに謝った。
「何がごめんなの?そんなこと言わないでよ!」
さっき打ち付けた痛みなんかもう問題ではない。
このままでは彼と一緒に居られなくなりそうな気がして、とてもこわくなった。
わたしは体を起こし、咲斗くんの目を見る。
「…アカンねん、俺ら一緒に居たら菜乃を傷つけてまうわ」
咲斗くんは視線を逸らし、小さな声でそう言った。
「咲斗くんの言ってること分からないよ…っ…咲斗くんっ…」
彼と離れたくない。
その強い想いからか、涙が溢れてくる。
「菜乃…泣くなや」
「だって…っ…」
こんなに近くに居るのに抱きしめてすらくれない。
咲斗くんとわたしとの間には壁があったことを初めて知らされた。
「咲斗くんっ…」
「分かった…ごめん。勝手に決めてごめん、ちゃんと話すわ」
決心したようにわたしに告げる。
そう言った咲斗くんの目は、さっきと違って真っすぐとわたしの目を見ていた。
「話すって…何を?」
咲斗くんはわたしの前に腰を下ろし、ゆっくりと話始めた。
「菜乃、落ち着いて聞いてくれるか?」
「…うん」
2013/01/11
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