ユメトビラ | ナノ

「 元気な派遣さん 」




うんざりする。
みんな見た目で判断して。そういう人を見ていると気分が悪い。

『かっこいいから』
『可愛いから』

そんな見た目で左右されて馬鹿だとは思わないのだろうか。
少なくともわたしは思う。


「上坂、この資料まとめとけ」

「はい、分かりました」


先輩に言われてわたしはまた資料室へと向かったのだった。



薄暗い資料室。


―節電を心がけましょう

と書かれた紙が貼ってある。


わたしくらいしか入らない資料室なのだから、嫌みとしか思えない。


仕方なくわたしは電気をつけるのをやめた。


「えっと、次の会議に必要な書類は…っと」


緑色のファイルを出す。
随分と昔のファイルらしい。端々が折れている。


いくつかファイルを見つけたところでそれを机の上に置いた。

ファイルは中々重くて、腕にずっしりと応える。



時計を見ると6時。
夕日も暮れている時間だ。
部屋もすっかり暗くなっていた。


「ふぅ…」


そろそろ部署に戻って仕事を片付けよう。


戻ろうとして書類を抱えた時、後ろに何かの気配を感じた。


「きゃっ…!」

驚いて書類を床に落とす。
同時にその衝撃に耐えられなかったわたしは尻餅をついてしまった。

「わ、わぁっ!」

相手も驚いているようで、わたしよりも低い声が聞こえる。



「あれ…風宮さん?」

上を見上げると風宮さんがわたしを見つめていた。


「なんでこんなところに?」


「菜乃ちゃんどこにいますかって聞いたら
ここにいるかもしれんって上司の人が教えてくれてん。

鍵開いてたから居るんかなって思って中覗いて見たら真っ暗やし、
急に声聞こえてびっくりしてもうたわ」


「すいません…驚かせてしまって」


わたしが謝ると
「でも菜乃ちゃん居ったから良しとするわ」と言ってにっこり笑った。


「でもなんで電気もつけんとこんな真っ暗な中で…」

「次の会議で使う資料を集めていたんです」

「せやからって電気つければええのに…」


わたしは黙って貼紙を指差す。

「節電を心がけましょう…ってこれのため?」

「うん、わたしくらいしかこの部屋来ないのにね。嫌がらせ」


「ひどい…そんなんひどいやんか」

「仕方ないの、わたしは下っ端だから」


そう言うと、風宮さんは悲しそうな顔をした。

「…行きましょう」

ファイルを拾い集めると、風宮さんは何も言わずに
半分以上も持ってくれた。


「…ありがとうございます」


「当たり前やん、女の子に重い荷物なんか持たされへんよ」


そう言ってまたわたしに微笑んでくれる。

きっと、他の子にもそうやってしてくれてるんだ。




2012/11/04

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