ユメトビラ | ナノ

「 雨宿り、キミノカオ 」




それから何日か雨が降ることはなくて。


わたしが先輩に会うこともなかった。





梅雨時期にこんなこと嬉しいはずなのに、
雨が降っているわけでもないのに…


わたしの心はもやもやしてた。




いつも通り、帰り道を歩いていたらポツポツと雨が降ってきた。


持っていた折りたたみ傘を出して、開く。

ふと、橋の下を眺めると見覚えのある後ろ姿があった。



「…風宮、先輩?」



いつも隣にいる木野さんの姿はなくて、
先輩は相変わらず傘なんか持ってなくて。




降ってくる雨で先輩の髪の毛は濡れていた。

ただ立ちすくんで、全身から雨が滴るように。



わたしはいてもたってもいられなくなって、足は勝手に
先輩の元へ歩いていた。



「…裕か、スマン少しの間一人にしてくれ」


わたしのことを木野さんだと思ったのか、
先輩からは考えられないくらい小さな声が返ってきた。



「…あのっ、先輩」


わたしが声をかけると先輩が振り返る。


「…何や、お前か。あっち行けや」



急に冷たくなった声に驚きつつも、同時に木野さんには
気を許しているんだなって実感する。


先輩の顔を見つめると、頬に涙が伝っていた。





「一人で…、泣いてたんですか?」



「うっさいわ、泣くわけないやろ。これは雨じゃ、ボケ」


「…先輩」



「うるさい言うてるやろ!邪魔や」



あまりの剣幕に後ずさりしそうになりながらも、
前に言われた木野さんの言葉を思い出した。



―「咲斗の「うるさい」は「寂しい」ってことやねんで。
あんな性格やから周りに誤解されることが多いねん、せやから…
自分から人と関わることを避けてんねん」―




「…お前やってどうせそうなんやろ。

自分から近づきよって、俺が何したんかわからんけどみんな逃げてく。
避けてくんやろ。

しょーもない噂たてられて。
「違う」言うてんのに誰一人信じへん。

裕だけや…俺には裕だけ居ればええねん。


せやから俺に関わらんといてくれ!」



ぎゅっとこぶしを作る手に力を入れて喋る風宮先輩が
凄く寂しそうに見えた。




「わたしは…先輩のこと、ちゃんと知りたいです。
裏切るようなことしません。先輩のこと、信じます」





「…なんやねん、それ」





先輩はそう言ったけれど、少し笑ってこう言った。






「ほんなら…どこにも行かんと俺の傍に居れ」






雨宿り、キミノカオ。


雨の日にはキミの本当の顔が見える。










END





2012/09/23

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