ユメトビラ | ナノ

「 雨宿り、キミノカオ 」



何日か経って、また雨が降った。

するとちょうど風宮先輩に会って、
でも先輩はわたしの方を少しも見ずに
またいつものように傘をささずに走って行った。


校門に傘をさした木野さんが立っている。
わたしに気づいてにっこりと手を振ってくれた。

少し控えめに手を振り返す。

風宮先輩がこっちを向いて、目が合ったから
手を振るのをやめちゃったけど。



帰り道、歩いていたら橋を見下ろしている木野さんがいた。


「菜乃ちゃん」


手招きしてわたしを呼ぶ。



「どうしたんですか?」と木野さんの元へ行くと
人差し指を口元にあてて「しーっ」と静かにするよう言われた。



「…なんですか?」


小さな声で尋ねると、橋の下を指差す。


「あっ…」


そこにいたのは風宮先輩だった。

この間の子犬を抱き上げながら、濡れた子犬をタオルで拭いている。


「咲斗がな、雨やから心配や言うて様子見に来てん。
家で飼えへんこと気にしててな…」



わたしは木野さんの言葉に何も返せなかった。



あまりに、意外すぎて。


噂なんか、全部嘘だと思うほどに。


なんでこんなにいい人のことを
何も知らないくせに言いふらすんだろう。






…優しい人なんだなって思った。







不器用な人なんだなって、そう思った。








「咲斗!菜乃ちゃんやで」


今まで静かに見守っていた木野さんが
橋の下にいる風宮先輩に声をかけて手を振る。


「あぁ?菜乃?誰やそいつ」

「同じ高校やないの〜この間、子犬拾った時に居った子」

「…忘れた」


「も〜、咲斗覚えてるくせに」



「知らんもんは知らん!」


ギッと睨まれて、わたしは「すいません」と咄嗟に謝って
その場を後にした。



2012/09/22

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