「 雨宿り、キミノカオ 」
「危ないことしないでって言うたやん!」
「…うるさい」
心配そうに走り寄ってくる彼女さんを冷たくあしらう。
「うるさい、やないよ!あんな無茶して!!
ホンマに危なかったやん!
ケガでもしたらどないするつもりやったん!」
「…分かったって」
あんなにこわい先輩が、彼女さんに謝ってる。
「それに咲斗、女の子に冷たくしたらアカンって何回も言うてるやん」
「うっさいわ」
「はいはい、咲斗は天邪鬼やからね。
だから誤解されてまうんよ?ホンマは優しいのに」
「ちょ…黙っとけアホ!」
黙っておくようにと手で制する。
彼女さんはそれに従い先輩の隣で黙った。
「あれ、咲斗と同じ制服やん。もしかして知り合い?」
「いえ…わたしは違います」
勘違いされちゃったら彼女さんが可哀相だし。
「なんか…わたしのせいで彼女さんに
八つ当たりがきちゃってすいません」
「彼女…?もしかして、僕のこと?」
ちょっぴり悲しそうな表情で彼女さんは自分の顔を指差す。
(ん、…僕?)
「あはははは!裕お前っ…また女に間違えられてるやん」
「僕、男やし」
ちょっとすねてる姿も女の子みたいに可愛くて。
「す、すいません!あまりに可愛かったので」
「制服で、しかもズボンやってのに間違えるなんて自分アホやな」
わたしのほうを見て、馬鹿にするようにそう言った。
「ほら〜そういうこと言わない!」
そうやってかばってくれるのに対して
風宮先輩は「いくで」と言って先に歩いて行ってしまった。
「僕、木野裕。高3で男やから。
次会うた時は忘れんといてな?」
優しく微笑んでくれた木野さん。
いい人だなぁ。
「そや、君の名前は?」
木野さんに聞かれて「上坂菜乃です」と答えた。
「菜乃ちゃんな?よろしく〜」
「裕!はよせぇや、おいてくで!」
「ちょっと待って〜!」
木野さんは大声で言う。
「菜乃ちゃん、咲斗の「うっさい」=「かまって欲しい」
ってことなんよ。
もし言われても怒ってる訳やないから…
たまには気にかけたって?」
「おい裕!何いらんこと喋っとんねん!
変なこと吹き込んどるんやないやろな?
シバくぞ、ボケ!」
「今行くって。」
木野さんは「じゃ、またね」とわたしに手をふり走って行った。
「そんなん口ばっかりでしたことないくせに。
咲斗優しいねんから」
「黙っとけ」
風宮先輩は木野さんの頭をバシッと叩いて
でも楽しそうに歩いて行った。
2012/09/16
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