05 ずっと思ってた「俺も…お前のことを嫌いになったこと、一度たりともないわ」
「そぉなん?自分、アタシのことなんかどうでもええのんとちゃうん?」
「そないなことあるかい!」
突然の大声に、和葉の肩がわずかに揺れた。
「離れとった一年間、一日たりとも忘れへんかったわ…
同じ学部の友達に誘われて出かけても、お前も連れて来たかったな…とか、美味いもん食ったとしてもお前にも食わせてやりたいな思うてた…」
恥ずかしさ、なんて感情は全く感じひんかった。
ただ、少しでもこの想いが和葉に伝わればと思った。
「……なぁ、和葉」
なぁに、と和葉のしっぽが揺れた。
「俺のこと、また好きになってくれなんて…そないなこと言わん。わがままやって分かっとる。
ただ…お前と一緒に居りたい」
「アタシも平次と一緒に居りたい。高校生の時、みたいに…」
和葉は思い出を懐かしむように遠くを見つめる。
「俺の家で…… 一緒に暮らさへんか? 」
遠くを見つめていた和葉の目と、目が合った。
「大学をこっちに移せなんて言わん。お前の負担は出来る限り減らすつもりや。
金、土、日の三日。三日間でええ…週に三日だけ、俺の家に来てくれへんか?」
ずっと望んでいたこと。
和葉と一緒に居りたい……
わずか数秒がとてつもなく長く感じる。
「ええよ、」
アタシが平次のこと…もう一回好きになるとは限られへんけど、それでもええんやったら、と。
和葉は俺に優しく微笑んだ。
和葉と一緒に居れるなら。
「それでもええ」
俺と和葉のおかしな共同生活が始まった。
2013/09/27
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