03 ポニーテール「また後でな。」
平次にそう言われ、別々の大学に進んでから一年が過ぎた。
あれから平次が大阪に帰ってきたことは一度もない。
愛想尽かされてしもうたんやろか…
平次から連絡も、電話も来ない日々が続く。
一週間に一回の遅いペースで送られてくる短いメールも今月は来なかった。
友達に相談したら「和葉にはもっとええ男が居る!」って言われてもうた。
「もう…諦めろってことなんやろうな…」
アタシは自分の想いを胸の奥にしまおうと決意した。
* * *
…でも、こうやってポニーテールで東京に来てしまったのは
どこかでまだ諦めついてへんアタシが居たってことなんやろうね…
「和葉…」
そう名前を呼ばれただけで胸がチクリと痛む。
自分なりにケリをつけたはずやのに、平次の声がそれを許してはくれへん。
「もう、アタシに構わんといて…」
そう言うて掴まれている手を振り払おうとしたけど、平次の手は離れへんかった。
「俺がダメやねん!!」
急に聞こえて来た平次の大きな声にアタシは驚く。
平次の大きな声に驚いてびくっと体が揺れたのか平次はアタシに「スマン…」と謝った。
「…駄目やねん…俺が。」
すごく小さな声だった。
「お前が遠くに居るんも、本当は嫌やってん…
俺が知らん奴と喋っとるんやないか?俺以外の男に笑顔向けとるんやないか?って…
そう思ってまうねん…幼馴染みの俺に、とやかく言う権利はないって分かっとんねん。せやけど…嫌やねん。」
すごく久しぶりに平次の心を聞いた気がした。
2012/05/04
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