last up 2015/03/20


01 しっぽ
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「また後でな。」

そう言って別れてから一年が過ぎた。
和葉とは別々の大学に進学し、俺達は滅多に会わなくなった。


 * * *


「ねぇねぇ、バイク乗せてくれない?」

「スマンけど、無理やわ。ヘルメット一つしか持って来てへんねん。」


「え〜またぁ?…もう、仕方ないなぁ。今度は必ず乗せてよね?」



ようやく諦めてくれた女がどこかに行ったあと、俺はまた引き止められた。


「…いつまで乗せないつもりなんだよ?」

そう言ったのは工藤。



「さぁな。」

一言だけ返事を返し、ヘルメットをかぶった。



「乗るか?」とバイクの後部座席を叩き、隠しておいたヘルメットを投げ渡す。
工藤は何も言わずにそれを受け取った。


「…分かってるとは思うが…いい加減、はっきりしてやったらどうだ?」

「まぁ、そのうちに…な。」


「お前の気持ちの方もな。」


「…せやな。」


歯切れの悪い返事を返したあと、工藤が後部座席に乗ったことを確認してバイクを走らせた。




大学から家までの帰り道―。


和葉と帰っていた高校の頃が懐かしい。

そんな俺の気持ちを察してか、工藤は「俺で悪かったな」と謝ってきよった。


工藤を家まで送り届け、俺も家へと帰る。
大阪から引っ越してきて、俺は工藤の家の近くのアパートを借りた。


工藤の家の近くにしたのは、その方が「何かと便利」だから。
事件が起こった時にすぐに二人で駆けつけることができるように。って理由が一番なんやけど。



一人暮らしの家の鍵を開け、中へと入る。


薄暗く、殺風景な部屋が何故だか少し寂しさを感じさせる。
大阪の実家の俺の部屋には当たり前のように置いてあった女物の和葉の荷物も今は一つもない。
携帯と鍵をテーブルの上に置き、留守番電話もボタンを押した。


留守番電話 : 着信 一件



「―――…平次?久しぶりやね。…実は東京に遊びに来ててんけど、やっぱり平次…忙しいんやね。居らんみたいやから帰るね。風邪引かんように気ぃつけるんよ?」



ツ ―――。



留守番電話に残された和葉の声。
十五秒にも満たない時間なのにも関わらず懐かしい声は高校生時代の頃を思い出させる。




『会いたい』




そう思った時にはすでにバイクのキーを手に取り鍵もかけずに家を飛び出していた。



どこにいるかなんて全く当てはない。
ただ、どうせ電車で来たんやろうと思って駅へとバイクを走らせた。




――帰宅ラッシュの駅のホーム。


会社員やら学生やら…東京のホームは人が多くて敵わん…


この人ごみの中から人を見つけるなど、不可能に等しい。
実際、当てもない訳だし…和葉がここに居るとは限らない。




でも――…          見つけたんや。





あいつの『しっぽ』―。



そのしっぽは高校ん時と何も変わってへんかった。



2012/02/06


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