毎日は平和 | ナノ

 07 ナミダ


アタシは走っていた。

放課後、教室を一人出て向かった場所は学校の屋上。


屋上のカギは運よくあいていて、アタシは外に出ることができた。



その時見た空は夕焼け色に染まっていて

その空を見ていると胸がキュッと締め付けられて、一人の寂しさを突き付けられた気がした。


同時にアタシの目には涙が溢れる。



「平次…怒ってるかな?」


広い屋上に一人。
アタシは隅の方に座る。


夕焼け色の空を見つめていたアタシも「そろそろ家に帰らなお母ちゃんに心配かけるよね…」と考えていた時



キィ―…


屋上の扉があいた。


その相手が平次だということに気づき
泣いている所を見られたくなかったアタシは咄嗟に顔を隠した。



「和葉…」


平次に名前を呼ばれる。


その声はあまりにも優しくて、ようやく治まった涙がまた溢れる。


「…なによ。」

泣きそうなのを堪えながら小さな声で返事をした。


「…スマンな。」


「なんのことか分からんもん。」



アタシの声は震えてなかったやろか?

泣いてたん…
バレてへんやろか?



「…スマン。」


平次は…もっかいアタシに謝った。



「俺…事件が起きると、頭はそのことばっかりやから…周りのこと、全然見れてへん…和葉んことも…」




平次がゆっくりとアタシに近づくのが分かった。

そして、平次の手がアタシの髪の毛に触れる。


「…っ」


アタシは反射的に体を強張らせた。



そんなアタシのわずかな変化に気づいた平次は
アタシと距離を置き、ゆっくりと話す。


「なぁ和葉…お前怒らせたん…やっぱり俺か?」



「…ちゃうよ。」と返事をすると

「…せやったらなんで?」と平次がアタシに聞いてきた。



「お願いやから…時間が欲しいんよ。」


学園祭の日に、一緒にいられないくらいで
拗ねてしまうアタシ…

しっかり…気持ちの整理をしなきゃアカンのに…

平次と居たら気持ちがややこしくなってまう…



「アタシが勝手に怒ってるだけやから…
アタシに構わんといて…?」


「構うなって…和葉…なんやねん…それ―…」


少しだけでいいから
平次と距離を置かなければいけないと思った。



「…お願いやから…」



「あー…分かったで。俺と一緒に居たないんやな。
行けばええんやろ?」


「ごめん、平次…」


アタシのわがままを一方的に押し付けてしまっていることが、申し訳なくてアタシは平次に謝った。


「お前みたいなややこしい女は、俺かて一緒に居たないわ!あー、せいせいする!」


平次は大声でそう言うと、屋上から出ていった。



一人残された屋上で呟く。


「また…怒らせてもうたんやね…
素直になれへんアタシで…ごめん…」



 * * *



そして今に至る。


アタシは自分の部屋で一人、目を真っ赤にさせながら泣いた。





2011/12/10



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