毎日は平和 | ナノ

 06 頬の痛みは思い出の分だけ

「あんな奴…もう知らん。」


そう言った俺は頬に痛みが走った。


パンッ―!



「これ以上アホなこと抜かすんやない!」



オカンの手が俺の頬を叩いた。



「何があったか分からんけどね…

和葉ちゃんがアンタから離れて行ってまうの分かってて、男のアンタはそれを黙って見てるだけなんかい?

捕まえな、アカンやろ!

和葉ちゃん…
アンタのこと、待っとるかもしれへんで!」



オカンがこれほどまでに怒った顔は、久しぶりに見た。



「まぁ…後は平次…アンタ次第やけどね。」


オカンはそう俺に言い、夕飯の支度へと戻っていった。


―「俺…次第か…」


赤く腫れた自分の頬に手を当て、俺は自分の部屋のベッドに横になった。






ふと机の上に目がいく。


机の上には写真が置いてある。
和葉と写っている写真だ。


久しぶりにアルバムを取り出し、広げると和葉と写っている写真が目に入った。



生まれた時からの写真が何枚もあるが
それの半分以上は和葉と写っているものばかり。


「いっつも一緒やったんやな…俺ら。」




お互いが隣にいるのが当たり前だった。


喧嘩をするのもしょっちゅうだった。
でも、いつの間にか元に戻っていて和葉が隣にいることが当然のようになっていたんや。



しかしそれは、ただ幼馴染みということに頼りきって和葉を捕まえていただけなのかもしれない。



でも…今は違う。


幼馴染みという関係を止め、恋人になった今
『幼馴染み』の特権は通用しないだろう。


手を離せば、どこかに行ってしまうかもしれん…

そんな不安と闘う毎日。



俺は工藤みたいにキザな台詞を一つや二つかけられるようなキャラやない。


せめて思ったことを言えればええんやけど
それもうまくいかへん。


これも…
幼馴染みの関係が長かったせいなんやろうか…?



そう思ってしまうのも『言い訳や』って分かってんねんけどな…。



「あんなこと、言うつもりなんかなかったんに…

なんで和葉に…
あんなこと言うてもうたんやろ…」


俺は深い溜息をついた。



2011/11/24



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