毎日は平和 | ナノ

 04 理由

「ほんまに俺がやってもええんやな?」


俺に確認するように聞いてくる奴ら。



『…勝手にしろ』


と言えば済むことなのに
和葉のことになると俺はまるっきりダメで…



「…俺がやる。」と言ってもうた…


こんな面倒くさい仕事やりたないのに

俺も心底、自分のことを『アホ』やと思った。



  * * *



―「…俺がやる。」


平次は確かにそう言った。

あんなに接客するん嫌がってたんに何でやの?
なんで『やる』なんて言うてもうたん?




「アタシ…喜んでええの?」


『喜んでいい』と言われたとしても
多分、今のアタシは素直に喜ぶことができない。


「期待しても…ええのん?」

アタシは小さく呟いた。





気持ちの整理もつかないまま、放課後となってしまった。



いつもは平次と一緒に帰ってる。


けど、朝のこともあったし…平次と顔を合わせるのが気が引けたアタシは何も言わずに教室を後にした。



* * *



帰りになると和葉は俺に何も言わず、どこかに行ってしまった。



「なんであんなに不機嫌なんや…」


俺がボソッと言った言葉に気がついた和葉の友達が俺に聞く。


「服部くん、分からないの?」


「…分からん。」


難しい顔をしていたであろう俺に、和葉の友達は控えめに言う。



「多分やけど…学園祭のこととちゃうかな?」

「学園祭?」


言われた単語をそのまま繰り返す。



「うん。和葉ちゃん、服部くんと一緒に学園祭回れたらええなって言っとったから…」


「…え?」


「もしかして…聞いてなかった?」


「おん…
和葉、そんなこと一言も言わんかった…」

和葉の友達は俺に説明してくれる。


「服部くん、探偵の仕事やってはるやろ?」

「まぁ…仕事やないけど、ちょくちょく呼ばれるなぁ。」


「それに、今まで学園祭居たことなかったやん?」と言われ

「せやな。」と返した。


「だからやと思うんやけど

『平次は探偵やから、当日居るか分からへんねん。

それに、いつでも事件に行けるように無理には誘わないことにしたんよ。』

って言ってたから…」


「そんなこと…和葉が?」


「うん…」


和葉の元気がなかった理由に気づけなかった俺は
黙って聞くことしか出来ひんかった。



アイツ…そんなこと
考えてたんか―…?

そう思うと、俺は和葉に言ってやりたくなった。


『大丈夫や。』と…


何が大丈夫なのか正直、俺にも分からん。


けど、きっとアイツなら俺の言いたいことを分かってくれるやろ。



「和葉、今どこに居るか分かるか?」

俺はクラスの奴らに聞く。

すると、ある一人が
「さっき階段の近くで会ったけど…」と言った。


「おおきに!助かったわ!」

俺はクラスメイトに礼を言い、すぐに教室を飛び出した。



『階段の近く―…』


それだけでも
俺にとってアイツを探すには十分な情報や。



アイツの考えること…

和葉の行きそうな場所は分かっとるつもりや。




俺は屋上へと向かう。



キィ―…

屋上のドアを開けると
隅っこの方で和葉が座っていた。




2011/11/05



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