毎日は平和 | ナノ

 03 後悔

「アタシ…アホや…」


なんでなんやろか…

自分から平次のことを避けていたのに、平次のことを頼ってしまう自分がいる。


平次とは一瞬、視線が合ったけど逸らされてしまった。



(…せやね。当たり前や…)



平次にあんな態度をとってしまった自分がいけないことくらい分かってる。


でも…

「…助けてくれてもええやんかぁ…」


アタシは小さな声で呟いた。



 * * *



俺は行動とは反対に心の内ではこんなことを考えていた。


(和葉にメイド服着ろって言うてた奴…確か、剣道部の奴やったな。
ええ度胸やんか…あとで…シバいたろ。)


「服部!」


名前を呼ばれて、はっとする。


「おん?なんや。」


「お前も執事服着て接客やからな!ええな?!」

「は?俺、やらん。」


「服部が居ったら女の子、ぎょーさん来るで!」


「俺は客引きの道具かい!絶対にやらんで!」


「立ってるだけでええから!」


「立ってるだけやろうとなんやろうと『ぎゃーぎゃー』五月蝿くて敵わんからな。」



正直、俺の周りにくる女達は五月蝿くて敵わん。

そういう女は苦手や。



勿論、和葉もうるさい。



泣いたり怒ったり…

本当に忙しい奴やで。


まぁ…俺にとっては
他の意味でも和葉は厄介なんやけど…


せやけど和葉は、俺の肩書きだけを知って
俺の全部を知っているような顔をする周りの女達とは違う。


気持ちを察してくれるのは勿論、俺の駄目な所や弱い所を知っている。



気を遣わずに居られる数少ない一人でもある。



「決定したから無理や!」とクラスの男子に言われたが
「ふざけんな!俺はやらん。」と言い返してやった。



着るも何も、そんなアホなことに付き合う程
俺も暇ではない。


「遠山やって着るんやから、服部も着ぃや!」


「そんなアホみたいな服
誰が着るか!絶対着ぃひんからな!
それに、当日やって居るかどうかも分からへんしな。」



「おー?
なら俺が接客やってもええんか?」


俺がやらんで済むようなので「やればええやんけ。」と答える。



「おう!ほなやるわ。」

あれ程、俺にやれと言っていた奴が素直に頷いた。



「メイド服着た可愛ええ遠山と一緒に接客やー!
服部が居らんのなら俺にもチャンスがあるってことやろ?よっしゃあ!」


ほぉ?…そういうことか。
和葉目当てっちゅーことか。


「お前ズルいぞ!俺も接客やるで!」

「僕もや!服部くんが居らんのならやりたい!」

「私も和葉ちゃんと接客するー!」


クラスの男共は和葉を狙ってるっちゅーことや?


ほんま…ええ度胸しとるで。コイツら。



俺と和葉が付き合っていることはクラスの奴らに言うてへん。
付き合う前から仲は良かったから、付き合った今も特に気付かれてへんし。


だからといって隠しているつもりもないんやけどな。


やからって…

『俺ら、付き合ってんねん。』とか…

わざわざ報告する必要もないやろ?


だからなんやろうか?
和葉を狙う奴らは多い。


高校に入ってからは特に…



* * *



「そんなアホみたいな服、誰が着るか!絶対着ぃひんからな!」


平次は怒ってた。


アタシと一緒に接客するんが嫌なんかな…?



平次はアタシと
一緒に居たないんかな…



一緒に居たいと思ってるんはアタシだけなんかな?


考えれば考えるほど、悪い方へと考えてしまう。


―「それに、当日やって居るかどうかも分からへんしな。」


その言葉がアタシの心に刺る。



(平次…今年も学園祭、居らんのや…また、事件に行ってしまうんや…)

そう思うと悲しくなった。



2011/10/31



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