毎日は平和 | ナノ

 02 すれ違い


「おい。」

「…。」

「なぁ?」

「…。」


「和葉!!」

「…。」


学校に到着してから、ずっとこんな感じ…

俺の呼びかけに和葉の返事は返ってこない。


「…。」


俺を無視して窓の外を見つめ続ける和葉の態度に俺の限界も近づく。


「…もうええわ。好きにしぃ。」

和葉の態度が気に入らなかった俺は、そういうと自分の席に戻った。


(どうしたんかな?)

(喧嘩したんとちゃう?)

(シー…!聞こえるで!)


クラスメイトの声が聞こえる。
そんな声も鬱陶しく感じてしまう俺―。


(和葉に相手にされんくらいでこんなにイライラしとるなんて…俺は子供やなぁ…)

自分の子供っぽさを実感する。

「あーっ!!」


どうしようもない気持ちをぶつけることも出来ない俺は
苛立ちを外へと吐き出すため大声を出した。


クラスの奴らがそんな機嫌の悪い俺にびびっていたことなんぞ、そんなん知らん。



それから和葉は口をきこうともせんし
俺が和葉のところへ行っても目をそらすだけ。

そのくせ、クラスの男共には笑顔で喋りよって…
そんなん…これっぽっちも面白うないやんか。

和葉が他の男に捕られんように勇気出して告白して
ようやく付き合えることになったんに…

これやったら…付き合う前となんも変わらんやないか!


邪魔な虫がつかんように俺がどれだけ苦労しとるか知らんのか?


「…はぁ。」

自然と深い溜息が出た。


―そのまま時間も過ぎ6時間目。



担任が教室へ入ってきて俺達も席へと戻る。

担任が気怠そうな表情で教壇へ立つと授業が始まった。

「そろそろ学園祭やけども
クラスごとに出し物をすることになったみたいや。」


「『みたいや。』ってなんやねん。他人事かいな…」


小さな声で言ったつもりやったが聞こえていたようだ。


担任は俺の顔見ると「会議で言うとったんや。」と言った。

そんな担任の言葉に俺は笑いで返す。

担任は、俺の態度を気にしていないようで
そのまま話を続けだした。



「まー…俺はこういうの面倒やから
お前らで好きに決めてくれて結構や。

用紙はここに置いておくからな。
決まったら記入して職員室の俺の机の上に置いといてくれ。」


そう言うと用紙を教壇に置き、教室を出ていきよった。


(仮にも教育者やろが…
教師がこんなんでええんか?まったく…)


心の中でそう思つつも
俺も学園祭については特に興味がないので
決まったもんをやろうと考えていた。



「なんかやりたいもんあるー?」

前に出て、担任の代わりに話をし始める学級会長。


劇がええとか
模擬店がええとか…

楽そうやから展示でええと言うものも中にはいる。
そんな中、一人の女子生徒が言った。


「カフェなんかどう?」

「それ、ええなぁ。」


一人の賛成の後に
「そうやな!」「ええなぁ!」と、他の賛成の声が次々に聞こえてくる。


「カフェやんならコスプレカフェみたいな方が目だってええんとちゃうかな?」という女子の声に

「お!ナイスアイディアや!」と男子達の声が返る。


「じゃあ、遠山はカフェの接客やな!」と俺と同じ、剣道部の奴らが和葉に言った。

接客っちゅーたら…男も居る訳やろ?

ありえへん。和葉に他の男の接客なんぞさせられるかい!


「え、アタシ?」


和葉はと言うと急に自分の名前が出て、驚いている様子だ。


「遠山が接客やっとったら絶対入りたいって思うで!」


「…ほんま?」


「おう!勿論や!」

「なんか…照れるなぁ///」


アイツも満更ではない様子で頬なんぞを染めとる。



褒められたくらいで、何でしっぽ振っとんねん!
褒められたら、誰でもくっついて行くんかい!!

そんなことしとったら勘違いされることくらい
分からんのか?!


天然にも限度っちゅーものがあるやろが!



俺は和葉の態度に心の中、一人で愚痴をこぼす。


「ほんなら遠山は、接客決定やな!」


「え?あ…うん。」


和葉は剣道部の男らに同意を求められ、頷きよった。

多分、無自覚で…



「お!言ったな?言ったよな?」


剣道部の奴らは嬉しそうに聞き返す。


お前ら…

下心のある目で和葉んこと見よって…!


和葉はお前らのちゃうて俺のもんや!


なんて…当然、言える訳もなく俺は苛立ちを増す一方。


「うん。…言ったけど?」


和葉が返事をすると
「よっしゃあ!遠山は接客決定!」と
クラスのほとんどの男子が喜んどる。


そして、ある一人の男子が言った。


「ってことで遠山にはメイド服を着てもらいます!」


「…なっ?!」「え?!」

俺と和葉の声が重なる。


「め、メイド服?なんでなんよ?」


和葉は慌てながらもその男に尋ねた。


「コスプレカフェやから!」


男は何の躊躇いもなく和葉に言いよった。


「アタシ無理やよ!
メイド服なんて絶対無理や!」


気が優しく、頼まれたことはほとんど引き受けてやり遂げる和葉が「無理」と言っている。
本当に嫌なんや。


「そんなん似合わへんし
普通に制服にエプロンでもええやん!」と必死になって拒否しとる。


『似合わない』といったら嘘になるんやけど、接客くらいなら
俺もエプロンで十分やと思った。


「ダメやー!さっき接客やるって言ったん、遠山やでぇ?」


「言うたけど…」


和葉が助けてほしそうに俺の顔を見る。

いつもの俺やったら真っ先に助けているだろう。



せやけど…

今日は、理由もよう分からんのに和葉に無視されている。


(…俺のことを無視しとるから、そないなことになるんや。)



少しは俺のありがたみを分からしたろうと思ったのと
和葉に無視されて苛立っていたのもあり
俺は和葉から目を逸らした。



和葉は「アタシ…アホや…」と小さな声で呟いた。


まぁ…
服部本人に聞こえているかどうかは別として。



2011/10/29



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