毎日は平和 | ナノ

 01 平和な…?朝

俺と和葉が付き合ってから一ヶ月が過ぎようとしていた。


季節は秋。
学園祭の季節―。


和葉との喧嘩は絶えないが、仲良くやっている方やなとは思う。


付き合ったことによって
幼馴染みだった時と変わったことは特になかった。


でも…
お互いにまだ、恥ずかしさと照れがあるんも事実やな。


そんな中、今日も和葉と一緒に登校する。



「おはようさん。」

「おはよう、平次。」


和葉は毎日のように俺の家に迎えに来る。

昼の弁当は、付き合う前から和葉の手作りや。


「ほな行くか?」

「うん!」


いつも通り、通学路を歩く俺達。


「なぁ…平次?」


和葉は覗き込むようにして俺の顔を見た。


「おん?なんや。」


俺は和葉の方を向いて返事をする。


「あ…いや、やっぱり…なんでもあらへん///」


そう言って、そっぽを向いてしまう和葉。
その顔はわずかではあるが赤く染まっている。


だが和葉は明らかに何かを言いたそうやったから俺は聞き返した。



「なんか言いたいことあるんやろ?早う、言い?」

「なんでもないから気にせんといて///」


和葉は歩くスピードを少しだけ上げ、前を歩く。
俺は歩くスピードを和葉に合わせ、隣に並んでから声をかけた。


「なんでもない訳ないやろ?言いたいことは言いや。」

俺なりの優しさのつもりやった。


なのに…


「なんでもないって言ってるやん!いいから気にせんといてぇや!」



俺の一言がまずかったのか(?)和葉を怒らせてしまった。


「別に怒らんでもええやろ。」


俺が和葉に声をかけると和葉は「怒ってへん!」の一点張り。
これ以上この話題を話していると和葉をもっと怒らせると思った俺は話を変えた。



「そろそろ学園祭やな。」

「…そうやね。」


少し機嫌が直ったのか和葉の声が優しくなる。


「でも、あれやな。」

「ん?」


「学園祭の準備っちゅーのは面倒やな。」

「…せやけど、当日は楽しいやろ?」



和葉は俺にそう言うが
俺は頷くことができへんかった。


はりきって学園祭の準備をする俺だが

当日になると事件やら何やらで…
学園祭に居たことはない。


中学の頃からそうやった俺は最近、学園祭の準備さえ面倒になっている。


しかし学園祭の準備で和葉の帰りが遅くなると
和葉の両親と俺の親が心配するから、仕方なく手伝ってはいる。



まぁ…


俺の親が心配してんのは「和葉」の方で
実の息子である俺については何の心配もしとらん。


まったく…
本当の子供は俺やなくて
和葉の方なんかい!

一度だけ、オカンにそう言ったことがあるが

オカンは
「ほんま、和葉ちゃんが
うちの娘ならどんなにええやろか?」と

意味ありげな笑いで俺をみるので、それ以来この話はオカンにしなくなった。



そんなことを心の内で思いだしながらも和葉に返事を返す。


「俺は当日に居ったことないから…
よぉ分からんわ。」


「そう…やったね。」

俺の返事に和葉は少し悲しそうな表情をした。


「…でも、今年は学園祭に何も起こらんとええね。」


和葉がそんなことを言うから、俺は
「アホ!当たり前じゃ。」と和葉の額を指でツンと押してやる。


「何も起きんで平和なんが一番や。」

そう俺が言うと
和葉は「そうやね。」と頷いた。



和葉が事件のことなんかを話すから
ふと、工藤と解いたこの間の事件のことを思い出す。



「ねぇ…「この間の事件のこと、まだ話してへんかったやろ?
この間はな、工藤がな?―…」


いつも事件を解決し、家に帰ると部屋には和葉がいて
詳しゅう聞かせて欲しいと言われる。


やから、思い出した時に話してやろうと思った。

またいつものように
興味津々に聞いてくると思っていた俺。



「…もういい。」

「ん?なんか言ったか?」


左に居る和葉の顔を覗き込むと和葉は歩くのをやめ、言った。



「平次の顔…見たくない!アタシ…先行く!」

「え?ちょお…和葉?」


和葉は俺の呼びかけに反応一つせず走って学校へと行ってしまった。


俺は確かに見た。

悲しそうに怒った和葉の顔を―…

そして…潤んだ目。


そんな和葉の態度に驚きを隠せないでいる俺。


かつて、事件の話をしてこんな反応が返ってきたことがあっただろうか。


「泣いて…たんか?」


和葉が泣いていた訳も分からず一人残された俺も
時計を見て、時間がないことを知ると仕方なく学校へと向かった―。



あの時、和葉が何かを言いかけていたことなど知らずに―…




2011/10/27



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