![]() 「…ええのん?あんなに着るの嫌がってたんに、こんな格好でうろうろしとっても…?」 沈黙に耐えられなかったアタシは平次に聞いた。 すると、「お前も着てるやんけ。」と言われメイド服を指さされる。 「こんなフリフリの格好しとったら、俺なんか目立たへんからええんや。」 「あ…ほんま!アタシの方が派手や///恥ずかしい///」 よく考えてみれば執事服よりメイド服の方が派手な訳で… でも、執事服を着ている平次も十分目立っていて校舎から出たあとアタシ達二人は他校の生徒から注目を浴びた。 * * * 校舎を出てから和葉を見る男共の視線が気になる。 当の本人は気が付いていないらしい… だから俺は人気のない所へ連れて行く。 「ほんま…こんな格好しよって… 他の男に見せられへん。ほれ、これ羽織っとき。」 渡したのは俺が着ていた執事服のジャケット。 「…あ、ありがとう。」 肩にかけてやると和葉は照れながらも礼を言った。 …そんな姿も愛おしく思ってしまう俺。 我ながら、頭がおかしいんやと思う。 「お…おぉ。」 和葉の礼に返事をし、少しだけ顔を見つめてみる。 俺が見つめていることに対して不思議そうに上目遣いで見上げてくる和葉。 そんな和葉の行動に自制の効かなくなった俺は和葉を引き寄せ抱きしめていた。 「ちょお…へ…平次?いきなりどうしたん?」 和葉の問い掛けなどまるで無視の俺は 『もう少し…あと少しだけ…』と和葉を抱きしめた。 「平次っ…離してぇや///クラスの皆にこんなところ見られたら…どないすんの…?」 「構わん。ちょうどええわ。見せつけるチャンスやろ。 それに…和葉んこと誰かに渡すつもりもないしな。」 「アタシも…」 「ん?」 「アタシも…平次以外の人に渡されんのは…嫌やよ?」 こいつ…可愛ええこと言いよる。 『お前は俺だけのもんや。』なんて、恥ずかしくて言える訳もなく そのかわりに和葉を抱きしめる手の力を少しだけ強めた。 ずっとこうしていたいが、こうしているのも目立つ… 名残惜しくも和葉を抱きしめていた手を離し、代わりに手を握る。 「行くで。」 「え?どこに?」 「まわりたかったんやろうが。」 「なにを?」 ここに来てまで天然な和葉らしい返事に 「学園祭や!ボケ!回りたかったんなら素直にそう言え!しょーもないことで俺にあんまり気ぃつかうんやめぇや。ええな?」 と言ってやる。 「…うん。」 和葉の返事を聞いたあと、おもいっきし手を引っ張った。 「おし!じゃあ行くで?」 「うんっ!」 俺の隣にいるのは 素直やなくて 涙もろくて 元、幼馴染みの …愛おしい人。 これからも 手放す気ぃなんかないから お前は安心して 俺だけの隣で笑ってればええねん―。 END 2011/12/28 prev|TOP|next |