![]() 学校に着くと早くも他学年の生徒が準備をしていたので俺も教室へと向かった。 俺が教室の中へと入ると「服部、遅いで!」という声と共に和葉のメイド姿が目に入った。 和葉はクラスメイトに囲まれとって俺には気づいとらん。 「なぁ服部!遠山、可愛ええやろ?」と言う声を無視し、俺は席へとついた。 ―学園祭が始まる五分前 俺がトイレから出てきた時、三人の男に捕まった。 「服部!頼むから、これ着てくれ!」 そう言って渡されたのは執事服。 「着るつもりないで。俺、言ったよな?」 「そう言わんと…頼む!」 三人は拝むように手を合わせて俺をみる。 「スマンけど、他あたってくれや。接客は『やる』言うたけど、『着る』とは言うてへん。」 俺は冷たくそう言うと、教室へ戻ろうとした…が、そうはいかなかった。 「服部…スマン!」 「悪く思わんでくれ!」 「これで…女子達、集めてくれ!」 三人の声が次々と聞こえたかと思うと俺は無理矢理に学ランを脱がされて、そのかわりに執事服のえんび服を着させられる。 「ちょお…や、やめろ!」 抵抗も虚しく、三人相手に俺もされるがまま。 なんや分からん蝶ネクタイまでさせられて いつの間にか、手袋まではめられて… …執事の完成。 その後は勿論… 既に始まっているコスプレカフェの女達の元へと投げ込まれた。 【『「キャーっ!」』】 俺が教室へと入った途端、耳をつんざくような声が出迎えた。 そして俺の周りにはあっという間に女達が群がる。 キャーキャーと叫ばれ、質問攻めの状況に苛立ちが募っていった。 そんな中、俺は和葉を見つける。 すると和葉は誰か分からん他校の男と喋っとった。 * * * アタシは二人組の男のお客さんに呼ばれ、接客へと向かった。 「お待たせ致しました。ご用でしょうか、ご主人様?」 かぁぁぁ―…/// 何回言ってもなれない言葉や。 「『ご主人様』なんてアニメの世界だけやん!」って友達に反論したんやけど… そうしないと… メイド服を着たアタシの写真を平次に送るなんて言うから…仕方なく言う。 いきなりキャーキャーと言う声が聞こえてきたから声のするほうを見ると執事服を着た平次がたくさんの女の子達に囲まれていた。 今日は来ないものやとばかり思っていた平次がいたことにも驚いたけど、あれほど着ないと言っていた執事服を着ていたことも驚いた。 でも同時に…女の子達に囲まれていたことがアタシの心を切なくした。 「俺らご主人様やって。」 そう言って笑う目の前にいるお客さん達。 恥ずかしくてアタシの頬が熱くなる。 「赤くなっちゃってる。君、すっごく可愛いやん。」 「彼氏とかおるん?」 二人の男の人の質問に困り、話題を変える。 「あ、いえ…そんなことええやないですかっ///そ、それより何に致しますか?」 「うわー!この反応だったらいないんじゃねぇの?」 「なぁ、この後さぁ俺らと一緒に学園祭まわらへん?」 アタシは対応に困り、やんわりと誘いを断る。 「そ、そういうことは…まだ仕事もありますし…」 しかし、諦めてはくれなかった。 「そんなの友達に任せておけばええやん!」 「じゃあさ、後で連絡するから携番とメアド教えてや。」 一方的に話を進められて断る隙がない。 「困りますよ…」 助けて欲しいと思ったアタシは無意識に名前を呼んでいた。 「へい…じ―…っ!」 * * * 様子を伺っていた俺だが和葉の異変に気がつく。 周りの奴らには分からんやろうが困った時や嫌がっている時にする、ぎこちない笑顔。 そして、和葉の目にはうっすらと涙が見える。 …和葉の口が俺の名前を呼んだ。 キュッ―。 「…っ?」 「悪いな。このメイド、使えん奴やろ?」 俺は気付くと女達の群れから抜け出し、和葉の腕を掴んでいた。 2011/12/19 prev|TOP|next |