![]() 懐かしいアルバムを開いていたら いつの間にか二時間もの時間が経っていた。 「平次ー!夕飯出来たから、早う下におりてきなさい。」 オカンの声に気づきアルバムを閉じて、 「おー。」と返事をしてから居間へとおりた。 テーブルには母親の作った手料理が並んでいた。 何故だかそこには俺の大好物ばかり。 「静香。今日は平次の好物ばっかりやな。めでたいことでもあったんか?」 既に居間にいたオトンはオカンにそう尋ねていた。 「なにもありませんよ。」と答え、オカンは微笑む。 俺が座ると「やっと来たか。」とオトンが言うてたけど俺は黙って夕飯を食べ始めた。 「…。」 オカンの料理は最高や。 それに加えて今日は俺の大好物。 せやけど… 食べた料理は味気無かった―。 普通によそられた一杯の飯を食べ終わるより先に俺の腹が一杯になった。 「…ごちそうさん。」 幼い頃から飯を残すとオトンに怒られていた俺は食べかけの飯をラップに包み、握り飯にする。 その握り飯を片手に持ち、部屋へと戻った。 「静香。…平次は何かあったんやろうか?」 「和葉ちゃんと喧嘩したみたいですよ。」 「なに?」 「まぁまぁ…そっとしておきましょう?」 「…そうやな。」 静香は平蔵をなだめ、そっとしておこうと言い聞かせた。 * * * 次の日から和葉は俺と距離をおくようになった。 和葉が俺の家にくることはない。 学校で和葉に会えたとしても、和葉は俺のことを無視するだけだった。 それは俺にとって何にもかえられない苦痛のみの日々。 そのまま一週間が過ぎ… ―明日は学園祭。 着るつもりなんか更々なかった執事服も、いつの間にか作られていた。 明日が来たら和葉はメイド服なんか着て知らん男の接客をする。 確かにメイド服は似合うと思う。 せやけど、その格好を他の奴らに見られるのは癪に障る。 複雑な気分や。 ベッドに横たわりそんなことを考えていた俺は、いつしか眠りについていた。 ピピピピピピ―! 翌日、俺は目覚まし時計のアラーム音によって目が覚めた。 いつも起こしに来てくれる和葉の姿は今日もない。 「…。」 俺は眠い目を擦りながら重い足取りで下へとおりた。 朝食を食べ終わった俺は学校へ行く準備をする。 顔を洗って、歯を磨いて… 寝癖を直し終わった所で携帯が鳴った。 和葉からのメールだ。 俺は携帯を開き、メールを確認する。 『先に行ってて。』という文字が目に入った。 この一週間、毎日送られてくる文字だ。 これを見るのも今日で七回目。 俺は携帯を閉じ、学ランに手を通した。 「いってきます。」 そう一言だけオカンに声をかけ「いってらっしゃい。」の返事を聞く前に家を出た。 2011/12/17 prev|TOP|next |