Memo
Sat
それは、いつもの夕方。
「和葉、今日飯食ってくやろ?」
こんな言葉が時々平次からかかるのは珍しいことではなかった。
基本アタシはええよ、と言って家に連絡入れてオバチャンの好意に甘えさせてもらう。
せやけど、今日は。
「んー…悪いからええよ」
いつもと違う返事に平次は不思議そうな顔をする。
「オカンが和葉に会いたがってんねん。オバハンの願いくらい聞いたってや。俺があとで言われるんやから」
「…えーっと」
答えに詰まってしまう。
「なんや。用でもあるんか?」
「大したことやないんやけどね。ちょっと…」
「ほう、何するん」
平次が興味深そうに、珍しく聞いてくる。
嘘をつくのも気が引けるので、本当のことを言った。
「…映画」
「映画?見に行くんか」
「…うん」
「それやったら終わった頃に迎え行ったるわ」
その後、飯食いに来ればええやろ。とでも言うかのように平次はバイクのキーを手に取る。
「…の、あとご飯」
「あー…さよか。」
「ごめんな、平次」
「別に構へんで。お前にも遊ぶ女友達くらい居るやろうしな。俺とばっかり居る方が逆に心配になるわ。俺しか絡む相手が居らんのかってな」
「男の子なんやけど、ね」
「…さ、さよか。」
「うん…」
「それにしても物好きなやっちゃなぁ。よりによって和葉と映画見に行きたがるなんて。よだれ垂らして寝てまうのがオチやのに」
くくく、と平次は笑う。
バイクのキーをズボンのポケットへとしまうと、平次は座りアタシを見て「楽しんで来い」って言うた。

なんや、心が痛くなった。

2014/09/20 Sat 10:36



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