「ほい、おまちどおさん」
「…思ってたよりまともですね」
「おたく、俺を何だと思ってんの」
「てっきり料理は出来ないのかと」
「あのな…26年も独り身で料理が出来ないって、それこそ壊滅的だろ」
「今までたぶらかした女の人に作ってもらっ、むぎゅっ」
「あーはいはい、黙って食いなさい、冷めるだろ」
「……、では、いただきます」
「はい、どうぞ」
「………」
「………」
「………」
「………どう?」
「……何だか、不毛な味ですね」
「不毛って何だよ、不毛って」
「栄養バランスとかは考えられてますけど、それだけというか」
「そうか?俺としては上手く出来たつもりなんだけど」
「おいしくないわけではないですけど、おいしいわけでもないです」
「意味分かんねえよ」
「携帯食料とか、『軍隊メシ』とか、そういう『ただ栄養摂れればいい』類の味ですね」
「あー…まあ軍属だった事もあるしな」
「まあ、『見た目は完璧だけど味は激マズ』じゃなくてよかったです」
「誰の話だよ。…はあ、何だかひどい言われようだな」
「料理が出来ないわけじゃないんですから、ミラも言ってましたけど、もっと楽しんで作るべきですよ」
「んー、そうか?」
「『ただ栄養を摂る為』とかじゃなくて、もっと自分の楽しみとか、そういう感じで作るとおいしくなると思います」
「…おたくはそうやって作ってるんだ?」
「まあ、今は喜んで食べてくれる皆がいますから、その為に作ってますね」
「『皆の笑顔が、見たいから』」
「誰のセリフですか」
「まあおたくは無駄にこだわるから料理が出てくるのが遅いけどな」
「………」
「んー…やっぱ俺は料理しなくていいかなあ」
「何でですか…折角作れるのに」
「だって俺には、俺の事を考えて一生懸命おいしいものを作ってくれる優しい子がいるし?」
「へ、あっ!?…な、何言って」
「いやー、知らなかったよ。おたくが今までそんなかわいい事考えながら料理してたなんて」
「そういう意味じゃなくて、」
「乙女だねえ、チハヤちゃん」
「!!…違いますってば!」
「で、今日は俺の事考えながら何作ってくれるの?」
「………」
「ん?」
「…ブウサギの耳と、卵焼き、どっちがいいですか」
「くくく…是非卵焼きで」
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ただ夢主をあわあわさせたかっただけ