ゆらゆらと、根元まで強引に押し入った割には焦れったく揺れる腰の動きに、チハヤは熱を帯びた吐息を吐き出し縋るように目の前の広い背中に手を回す。
その手が指を内側に折り曲げ丸められているのに気付き、アルヴィンは苦笑してチハヤの額に唇を押し当てた。
「爪、立てていいっていつも言ってるだろ?」
「ん…でも、痛いから…」
「痛いより気持ちいいから気になんないな」
「っ、言わなくていいですよ、そういう事…」
「へいへい…ほら、手え広げな」
アルヴィンの手がチハヤの手を取り、ほぐすようにゆっくりと握られた指を広げていく。
片手はそのまま背中に回させ、もう片方の手は自分の手に重ね指先を絡め合った。
同時に止めていた動きを唐突に再開し、小さく息を飲む音、続いて普段より甘く高い声がアルヴィンの鼓膜を打ち脳髄を震わせる。
「かわいい声出しちゃって、煽ってる?」
「…ばか…っ」
「そういうセリフも男にとっちゃアウトだぜ、チハヤちゃん」
そろそろいいかな、と、焦らすような動きが欲を多分に含んだものに変わる。
いよいよ余裕をなくした声が甘く部屋を満たす中、背中に回った手指が立ち爪が肩甲骨の下辺りに食い込んだ。
――痛みに浅く眉を寄せ、しかしその痛みすら心地いいと感じるあたり、どこかおかしいのかもしれないと小さく思いつつ。
視線だけでねだる深海の瞳と強く絡む指先の熱に流され、それより熱い部分に意識を酔わせ。徐々に身を倒していったアルヴィンの前髪がチハヤの額に落ちる。
「な、思いっきり爪立てていいぜ…跡が残るくらい」
「っ…痛い、でしょ…ふ、うっ」
「ん…俺もさ、チハヤちゃんが付けた跡がほしいんだよ、っ」
「…変態みたく聞こえますよ」
「うっせ」
睦言ともいえない言葉を交わしつつ、今宵も静かに夜が更けていった。
沈む爪先