「エリーゼェェ!いい子だからそれを大人しく俺に渡すんだ!」
「い、嫌…です…」
「フザケンナー!これはエリーゼのものだぞー!」
「それを有効活用出来るやつがお前ら以外にいるんだよ!!」
「え…?」
「そんなわけないぞー!エリーゼが一番似合ってるー!」
「あーもう、埒があかねぇ!よこせっての!!」
「いーやー!!アルヴィンのスケベー!!」
「人聞きの悪い事言うな!このっ」
「あっ!」
「ドロボーだー!」
「後でちゃんと返すって!」



・・・・・



「…で、ここはxでくくって簡単にするんだ。あとはこの公式があてはまるでしょ?」
「あーそっかー!やっと分かったよー!」
「ジュードは教えるのが上手いね」
「…レイアにも分かるような教え方を考えるのが大変だけどね…」

宿屋の一室で参考書やノートを囲み、ジュード、レイア、チハヤは束の間のほのぼのとした時間を過ごしていた。

「ローエン聞いて!私このページの問題全部解けたよ!」
「ほっほっほ、レイアさんはやれば出来る子ですからね。さあ、ご褒美にお茶とお菓子をどうぞ」
「やたー!!お菓子だー!」
「チハヤさんとジュードさんもどうぞ」
「ありがとう、ローエン」
「いただきます」

小さなテーブルを4人で囲み、ジャムを落とした紅茶を啜ってほっこりと。
お茶菓子のクッキーをかじり、時折何気ない話に花を咲かせ、穏やかな時間が過ぎていく。

「…平和だねー…」

レイアの呟きにしみじみと頷き、全員がカップを置いた瞬間、そのカップが小さく音を立てて揺れ始めた。

「!?」
「ゆ、揺れてる…?」
「やだ、地震?」
「皆さん、落ち着いて。これは…」

カップの揺れが大きくなるにつれ、地響きのような音が4人の耳に入る。
それは近付くにつれてどたばたとした足音に変わり、今いる部屋の前で一度止まって、

「チハヤァァ!!」
「ア、アルヴィン!?」
「!?…な、何ですか…」

ドアを破壊せんばかりの勢いで部屋に入ってきたアルヴィンに全員が身を竦める中、当の本人だけはずかずかとチハヤに向かって大股で進んでいく。

「ちょっ、アルヴィン何を…」
「おりゃっ!!」
「…っ!」

両手を振り上げたアルヴィンに反射的に身を丸め目を閉じたチハヤに、痛みはなく代わりにすぼっ、という音が入る。
恐る恐る目を開けるが、周囲の様子に変化はなく。

「ね、猫…いや、犬耳?」
「あっ、かわいい」
「お似合いですよ」
「は…?耳?」

そっと頭の上に手を伸ばせば、斜め上の辺りに何やら柔らかくてふさふさとした感触。
備え付けの鏡に駆け寄り、映ったのは三角形の黒い耳の付いた自分の姿で。
振り返った先には立てた親指を突き出したアルヴィンが、笑いを堪えるようにふるふると震えていた。

「あの、これ…」
「チハヤちゃん…そのまま『にゃあ』って言ってみて」

頼む、と緩みに緩んだ目で言う彼を見つめる事数秒、事態を理解したチハヤは小さく口を開き、

『…にゃーん…』
「うおお…!いいねいいね!!」

何度も頷きガッツポーズをするアルヴィンの頭上を指差して、

『――ゴルドカッツ』
「え?」


アルヴィンの視界、暗転。



猫(犬)耳万歳


※『ゴルドカッツ』についてはTOV参照

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