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いくら戦力外でも抱き抱えられてるだけなんて嫌だ。
俺だって少しぐらい役に立たないと剣道部員の名が廃る!
それに高瀬だけには負けたくねぇっ!
「先生、すんませんっ!」
「えっ!?」
ゴールまであと一歩ってところで俺は身を乗り出した。
思いっきり手を伸ばすと何とかゴールテープを掴めた。
でも離れないようにしっかりと虎威先生の腕を掴んでた所為で体勢が崩れ虎威先生を巻き込んで勢い良く倒れ込んでしまった。
『ゴ、ゴォォォル!!何という捨て身技!宮野選手、勝利への熱い執念でゴールテープを掴んだぁぁあっ!剣道部、1位を勝ち取りましたぁぁあ!!』
『しかし顧問共々盛大にこけましたが大丈夫なのでしょうかっ?』
「や、やった…」
手を見るとしっかりゴールテープを握り締めてる。
勝った…んだよな?アナウンスも剣道部が1位って言ってたし。
……勝った!!剣道部が1位だっ!!
体を打ち付けて痛ぇけど勝ったなら良し!体育館の床硬ぇな。
つか、虎威先生大丈夫か…?
俺が下敷きになったとはいえ、腕掴んで引っ張った反動でどっか打ったかも知れない。
先生本当にすんません!
「こ、虎威先生?大丈夫っすか?」
「この、馬鹿野郎っ!!」
恐る恐る声を掛けたら体を起こして俺まで体を引き起こされた。
怒らせるかもと思ったが怒鳴られるとまで思ってなくて体が強張った。
睨むように俺を見てから腕とか腰を触ってくる。
せ、先生?
「異常はねぇな。…お前は馬鹿かっ!もし肘打って痛めたりしたらどうすんだっ!手首を捻ったらどうするっ!大会出られなくなんだろっ!!」
「すっ、すんませんっしたぁっ!」
あまりに本気で怒るから条件反射で正座した。
そんなに心配してくれるなんて思いもしなかった。
「……1位になれなくても他の奴等に挽回させるから良いのよ。汰狼ちゃんはうちのエースなんだからもっと気を付けなさいね?」
虎威先生は困ったような顔をしてるけど喋り方はすっかり元に戻ってる。
てっきり巻き込んだから怒ったのかと思ったぐらいだし。
普段はあれだけど…やっぱ虎威先生は素晴らしい人だ。
真っ先に生徒の俺の心配をしてくれるなんて。
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mokuji]