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清隆寺怖ぇよっ!
つか部活対抗よりプレッシャーじゃねぇか?
徒競走でも勝ちにこだわってたみたいだし万が一負けたりしたら俺の所為だとか言って説教されたり蹴られたりするんじゃ…!
親睦深めるどころじゃねぇっ!!
『制限時間は3分です。それでは、よーい』
『どんっ!』
一斉に皆しゃがんで柔らかい玉を拾っては投げてく。
結構玉が転がってる。
チラッと向かい側の清隆寺を見たら真剣に玉入れしてる。
……今、格好良いと思ってしまった。
競技中だぞ俺ぇっ!
でも視線が清隆寺に向いてっ…落ち着け、落ち着け!
「汰狼君、どないしたんー?」
「え?」
玉を握ったまま固まってたら鷹嗣が顔を覗き込んできた。
清隆寺に見とれてたなんて言えねぇ…!
「えーと、その…楽しいなっ。俺玉入れ好きなんだよっ」
嘘じゃねぇけど何でこんな返答したんだよっ。
誤魔化そうと笑って答えたら鷹嗣が両腕いっぱいに玉を拾って俺に差し出してきた。
何だ?
「今の笑顔めっっっっちゃ可愛ぇわぁっ!ほらっ、俺が玉集めるから汰狼君は投げて投げてっ」
「おっ、おう」
誤魔化せたみたいだけど鷹嗣の腕から玉を掴んで投げる度に可愛いだの惜しいだの言われる。
玉がカゴまで届かねぇ…!
「汰狼、俺のも使って良いぞ。思う存分楽しめ」
「え?」
鷹嗣の腕の玉が少なくなってきたら今度は獅希が集めた玉を渡してくれる。
俺が投げるよりお前らが投げた方が入ると思うぞ。
『現在、1年が一歩リードしているようです!生徒会メンバーに玉を委ねてる中、剣道部1年は宮野君に託しているようです!』
『先程手を繋いで移動した時と言い、剣道部1年は本当に仲が良い様子です!』
まさかアナウンスされてる!?
出来たら放っておいてくれ!何でこんな展開になったんだよっ。
あのアナウンスで3年の方では会長がまた実熊さんにちょっかい出して副会長が止めてる声がする。
相変わらず獅希と鷹嗣が玉を渡してくれるんだけどいつの間にか手渡しに変わってた。
2年は平和だな…つか3分長ぇ。
もうそろそろ終わるだろうと思った時、本当に柔らかい玉か?って疑いたくなるぐらい凄い衝撃で顔面に食らった。
俺の向かい側から豪速球のストレートに来てあまりの衝撃にその場に倒れた。
「宮野君っ!大丈夫かっ!」
心配して駆け寄ってくる足音が怖ぇ。
そうだった。
渡される玉に夢中になってて忘れてた。
あいつが居たのを。
『ここでアクシデントです!宮野選手、反対側から投げている清隆寺選手の玉が顔に当たったようですっ』
当たったっつか、あれは当てたよな。
玉入れで豪速球投げるなんて普通有り得ねぇだろっ!
「汰狼っ」
「汰狼君大丈夫っ!?」
「ごめん。早く保健室行こう。俺が責任持って付き添うから」
「い、いや遠慮、しとく…」
「そう言わずに。早く冷やさないとっ」
周りは清隆寺様は悪く無いとかお優しいとか天使とか言ってるけどよく見ろよ。
目に憎しみ込もってんぞ。
ああ、俺がちゃんとカゴに玉入れなかったから怒ってんのか。
腕を折られそうな勢いで掴まれたらもう断れねぇ。
『玉入れは2年の勝利です!賞品は食堂のパフェ券一ヶ月分です!おめでとうございます!』
『なお、アクシデントにより、少し早いですが一旦お昼休みを入ります。皆さん、午後も頑張りましょう!』
賞品パフェ券だったのかっ!
くそぉ…やっぱ平和な2年が勝ったのか。
清隆寺に腕を引かれて保健室に向かってる。
歓声とかアナウンスがどんどん遠くなってきた。
顔痛ぇけど今から保健室で説教か…。
玉入れがトラウマになりそうだ。
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mokuji]