肉食系ラビット | ナノ


 


もう前向きに考えよう。
鷹嗣がやる気になっただけ良かったじゃねぇか。
これで鷹嗣がやる気にならなかったらただの恥晒しで終わってたよな。
あー、泣きてぇ。


『さぁて!ようやく選手がスタートラインに立ちました!果たして、1位になるのは誰かっ!』

『剣道部のご褒美キスは見れるのかっ!楽しみです!』


楽しみじゃねぇよ!
さっきまで鷹嗣に1位になってくれって思ってたけど今は1位になるなとさえ思ってる。
いや、でも部費の為にはキスぐらい…!

「もしあいつが1位になったらさっきのは踏み倒せ」

「えっ!?」

まさか真面目な獅希がそんな事言うなんて。
踏み倒してぇけど約束破るのは良くねぇし…腹くくるか。
鷹嗣、隣の清隆寺と楽しそうに喋ってんなぁ。
よく聞こえねぇけどキスは俺のもんやって声だけは嫌でも聞こえた。


『位置について』

『よーい』

『『ドン!』』

アナウンスと共にピストルがなって一斉に走り出した。
あああ、俺の初キスがぁぁぁ…

『剣道部、一歩リードです!このままゴール…』

『いやっ、生徒会抜いたぁぁあっ!速いっ、清隆寺選手速いですっ!剣道部と差をつけて今ゴォォォル!1位は生徒会ですっ!惜しくも剣道部は2位ですっ』



「嘘だろ?マジの鷹嗣が負けたのか?」

先輩達が驚いてるのも無理ない。
鷹嗣は部で1番足が速い。50m6秒台だ。
その鷹嗣を抜くなんて…

「清隆寺様素敵ぃぃっ!」

「うおぉぉっ、流石清隆寺様だぁぁあっ!!」

歓声の中、清隆寺の顔は余裕だ。
運動神経良いのは知ってたけどあそこまでとは。
何かすんげぇドキドキしてる。
何でだ?

「うああ〜、本気出したのに負けてもぉたぁ。汰狼君のキスがぁ〜…それに清隆寺君怖かったわぁ〜」

「あいつ、ニコニコしてるけど気迫あるよな」

あまりに肩を落として帰ってきたから抱き着かれても大人しくしてやろう。
つかそんなにショックなのか。

「始まる前になぁ、「させるかよ」って言うて凄まれてん。あの人、絶対腹黒や」

「えっ、清隆寺が?」

凄んだって、素になったって事か?
あの清隆寺がこんな人前で素になるなんて、そこまで勝ちにこだわりを持ってたのか。
ああ、またドキドキしてきた。
まぁ、清隆寺の素を見せられたら怖いよな。同室の俺ですらまだ怖いし。


『次の種目はパン食い競争です!参加の選手はフィールドに集まって下さい!』


 


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