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よく考えろ俺。
あの清隆寺が謝るか?
ぜーったい有り得ねぇっ!
「大体、何倒れてんだよ。いつから熱あった?」
「あ、朝からです…」
溜息が聞こえると共に手が離された。
答えた後のこの沈黙を誰か何とかしてくれ。
俺には発言権がねぇんだから清隆寺が喋れよ。
ちゃんと顔を見ないように視線を逸らすと不意に頭を触って撫でてきた。
しかも優しい手付きで。
どうしたんだよお前。
「……風邪引いてんじゃねぇよ」
「すみません」
「今度からは体調崩したらちゃんと言え。つか体調崩すんじゃねぇ」
「はい」
相変わらず横暴な口振りなのに撫でる手が凄く心地好い。
清隆寺は病人に弱いのか。
そういえば、
「…何だよ。手ぇ上げなくて良いから話せ」
布団から手を出して上げたりその手を掴まれて布団の中に押し込まれた。
しかも布団を肩まで掛けてくれるし。
これは夢だとしか思えねぇ。
「あの、ベッドまで運んでくれたんだよな?悪ぃ」
「別に。テメェぐらい軽い」
「それと今日出掛けるんじゃ…」
「病人放っていける訳ねぇだろーが。また倒れられたら面倒臭ぇ」
本当に今日の清隆寺は優しい。
段々脈が早くなる。
口調はいつもと一緒なのに声が柔らかい。
今日だけでも良い。
こうやって話せて嬉しい。
「清隆寺…手、繋ぎたい」
言ってから後悔した。
高校生にもなって何言ってんだ俺。
反応が無いから清隆寺を見たらポカン顔。
すっげぇレアな顔だ。
「………握ってやっから、早く良くなれ」
「…おう」
撫でてた手が布団の中に入ってきてしっかり俺の手を掴んでくる。
まさか本当に握ってくれるとは。
この優しさも熱が下がるまでだ。
しっかりその優しさを感じながら眠りに就いた。
「良いか、俺より先に風呂に入るな。俺のものは俺のものでお前のものも俺のもの。部屋の外では話し掛けんな。家事は全部お前がやれ。俺が呼んだら3秒以内に来い。雑用は全部お前の管轄だ」
「はい…」
結局一晩寝たら熱が下がったんだよな。
薬飲んでねぇのに早いだろ。
もうちょっと優しい清隆寺を堪能したかった。
そして学校に行く前に確認を取らされてる。
何だよ、驚くぐらいいつも通りじゃねぇか。
「ただし、部屋の中でなら好きな時に発言して良い。呼び方も様付けなくて良い。寧ろ付けんな。…体調悪い時はいつでも言え」
「え…」
「分かったか!」
「はっはいっ!」
俺が返事すると満足そうに笑って清隆寺は先に部屋を出ていった。
何だよあの顔。しかも、ちょっと優しくなった、よな?
「やべぇ…」
今までキツイ対応だったからそのギャップに胸が熱くなる。
何だかんだであいつは本当は優しいんだ。
どうしたものか。
胸が熱い。少し優しくなっただけですっげぇ嬉しい。
頭の中で清隆寺の顔がちらつく。
もしかしたら、この気持ちは……?
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mokuji]