肉食系ラビット | ナノ
はじめての優しさ

 


そういや、前に風邪引いた時もこうやって倒れた気がする。
詳しくは覚えてねぇけど確か家で倒れたんじゃなくて、傍に居た子に迷惑掛けたな。
あの時は世話になった。
いつも元気な俺が倒れたからかなり心配してくれたっけ。
元気にしてるかな。
名前どころか顔も忘れたけど。



ぼんやり昔に風邪引いた事を思い出してたらゆっくりと目が覚めてきた。
何か暖かい上に柔らかい。
冷たい床はどうしたんだ?


「ん、う…」

「汰狼、大丈夫か?」

ゆっくり目を覚めたら真剣な顔した虎威先生。
真剣な時は男前なのになー…。
取り敢えず質問に頷いたけど、あれ?俺保健室から帰らなかったか?
まさか帰った気がしたのは夢か…!?
何処から夢だったんだっ。
夢の中で倒れんなよ俺。
でも辺りの景色は見慣れた自分の部屋。
じゃあ何で虎威先生が居るんだ?

「全く、清隆寺が血相変えて乗り込んできたから焦っちゃったわよ」

「え?清隆…!」

状況が理解出来ず聞き直そうとしたら頭元から顔を覗き込んでくる不機嫌そうな顔に驚いた。
何っ、何で清隆寺が居るんだよっ!?

「俺の部屋のキッチンでデカイのが倒れてたから運ばせようとテメェを呼んだだけだ」

「相っ変わらず可愛くないわねぇ。アタシが来た時には汰狼ちゃんはベッドに居たけどぉ?」

清隆寺の態度と言い虎威先生の言葉と言い2人は知り合いなのか?
つか、虎威先生が運んでないって事は清隆寺が運んでくれたって事だよな。
お前、力持ちだな。

「清隆寺と同室なら汰狼ちゃんが知恵熱出すのも分かるわぁ」

「は?こいつ、知恵熱なのか?」

「そーよ。アンタと同室じゃストレス溜まっても仕方ないわよねぇっ」

虎威先生が棘を含んだ言い方をしてる。
俺が言った訳じゃねぇから!
俺を睨むんじゃねぇぇっ!

「……オイ、テメェはもう用済みだから帰れ」

「ホンッッットにアンタは可愛くないわねぇっ!汰狼ちゃんっ、何かあったらアタシの携帯にかけてくるのよっ!」

「はい。それと有り難うございました」

部屋から出ていこうとする虎威先生に礼を言おうと起き上がろうとしたら清隆寺に頭を鷲掴みされて起き上がれねぇ。
痛い!指がでこに食い込んで痛い!


「汰狼ちゃんを虐めんじゃないのっ…素直にならないと嫌われるわよぉ?じゃあね汰狼ちゃん」

手を振って虎威先生は出ていった。
まだでこを握られたまんまで痛ぇ。
それより気まずい。
何でお前が居るんだよ。
出掛けるんじゃなかったのかよ。


「………悪かったな」

小さな、本当に小さな声が聞こえた。
俺の聞き間違いじゃねぇよな?


 


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